21:過ちと後悔。 ページ21
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私がしていたことが人助けにではないのなら、人助けの本質とは何なのだろう。
木陰にあるベンチで一人、Aは頭を悩ませていた。
自分は正しいことをしていたはずなのに、何が違うのだろう。
かつて彼女を導いた友人はもういない。
そしてその後、彼女を導くべき人物はそれをしなかった。
故に彼女は道に迷っている。
『教えてよ、織田作さん…』
その呟きに答える者はいない。
だが、太宰には、微かに聞こえていた。
彼の心には、後悔が募るばかりだった。
「与謝野女医は君を責めてるわけじゃあないよ」
『…太宰さん』
太宰は、Aが求めている答えを云わなかった。
何も聞いていなかったことにしたのだ。
それは何故か。
きっと、彼の心にまだ迷いがあるのだろう。
「人は死んでしまったら、終わりだよ」
『知ってますよ、そんなこと』
Aは頭を上げないで云った。
彼らは誰よりも、その意味を知っていた。
死んだ人はどんなに願っても、戻ってくることはない。
「例えば君が一ヶ月で十人の人を救うならば、君が生き続ける限り、毎年百二十人が救われる」
Aが死んだら、救われるはずだった人が救われなくなるかもしれない。
それをどうか、彼女に判って欲しかった。
救う側も救われる側も、死んでしまったら終わりなのだから。
『太宰さん、私は間違ってますか?』
「どうだろうね」
彼女の精神に間違いはない。
ただ方法に問題があっただけ。
「帰ろう、A」
『……はい』
太宰はAの求めた解答を述べなかった。
彼女も、無理にそれを聞くことはなかった。
本人もきっと何処かで気づいている。
自分の間違いに。
そして太宰もそろそろ覚悟を決めなければならなかった。
Aを救うためにも、彼女の闇と対峙することに。
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河瀬(プロフ) - 久しぶりに心を締め付けられる作品を拝見しました…!もう涙腺崩壊です(つД`)ノありがとうございました!! (2018年12月28日 10時) (レス) id: 4d532e1b9e (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - コメ失礼します! 凄く良作で文才が素晴らしいですね…文才わけて欲しい位です(笑)感動し過ぎて涙が止まらなかったです!! 素晴らし過ぎて語彙力無くなりました… (2018年6月17日 21時) (レス) id: 1ce36ab38c (このIDを非表示/違反報告)
夢らら(プロフ) - 完結おめでとう! (2017年11月12日 13時) (レス) id: 3821086925 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした。すごくメッセージ性のあるお話で、心に残りました。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2017年11月12日 7時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - どんぐりさん» 嬉しいコメントありがとうございます!そう言って頂けると感激して泣きそうです!(笑) (2017年11月12日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月31日 0時