3:可笑しい。 ページ3
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地面が近づいて来て、彼女はそっと目を閉じた。
衝突まであと少し。
だが、思い通りにはいかなかった。
ふわり、と体は浮き、ゆっくりと地面に足をつく。
彼女はヘタリと座り込んだ。
『…やっぱり、死ねない』
顔を両手で覆って俯いていると、階段を駆け下りて来た国木田と敦が彼女の元へと駆け寄る。
見ず知らずの彼女の事を、本気で心配しているようだった。
「お前、何故、、」
無傷の彼女を見て、二人は驚いた。
建物の屋上から飛び降りたのだ、普通なら無傷で済むはずがない。
「何で、あんな事したんですか?」
敦は苦しんでいるように見える彼女に、そっと言葉をかけた。
女性は顔を上げ、敦を見る。
敦は優しく微笑んだ。
『私、可笑しいんです』
「可笑しい?」
さっきまでの表情とは打って変わって、ケロリとした表情で云った。
まるで別人のような、そんな感じ。
二人は彼女に、違和感を感じた。
『四年前から今にかけて、だんだんと可笑しくなっているんです』
「具体的には?」
彼女はそれに、答えなかった。
否、彼女自身もその答えを知らなかった。
自分は可笑しい、そうは判っていても何がどう可笑しいのかが判らない。
『先程は、出会い頭にすみませんでした』
「…いえ、大丈夫です!」
彼女は、今度は無邪気に笑った。
それにつられて敦も笑った。
「後の話は社で聞こう」
「お茶淹れますよ」
『はい、ありがとうございます』
屋上で出会った時とは違う。
彼女は何処か、可笑しい。
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河瀬(プロフ) - 久しぶりに心を締め付けられる作品を拝見しました…!もう涙腺崩壊です(つД`)ノありがとうございました!! (2018年12月28日 10時) (レス) id: 4d532e1b9e (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - コメ失礼します! 凄く良作で文才が素晴らしいですね…文才わけて欲しい位です(笑)感動し過ぎて涙が止まらなかったです!! 素晴らし過ぎて語彙力無くなりました… (2018年6月17日 21時) (レス) id: 1ce36ab38c (このIDを非表示/違反報告)
夢らら(プロフ) - 完結おめでとう! (2017年11月12日 13時) (レス) id: 3821086925 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした。すごくメッセージ性のあるお話で、心に残りました。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2017年11月12日 7時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - どんぐりさん» 嬉しいコメントありがとうございます!そう言って頂けると感激して泣きそうです!(笑) (2017年11月12日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月31日 0時