18:正しい選択。 ページ18
.
「乱歩さんとの連絡は?」
「事件の方が佳境だそうで」
「ふむ、じゃあ作戦立案から全て私たちでやるしかないね」
その日、軍警からの依頼があった。
港近くの倉庫に、犯罪異能組織の連中が身を潜めているらしい。
依頼内容は、彼らの捕縛である。
しかし、その規模は思いのほか大きく、流石の社員たちも頭を抱えていた。
「すぐ出発する。急いで準備をしろ」
作戦が決まり、それぞれが準備を始める。
何時もとは違った、大きな危険が伴う仕事。
社内に緊張が走っていた。
「あの」
「何だ」
少しして、鏡花が国木田へと問う。
「Aは?」
「彼奴は、」
「連れてはいかないし、連絡もしない」
答えたのは国木田ではなく太宰だった。
Aは丁度よく社長に頼まれておつかいに出ている。
「あの子は絶対に自分を犠牲にする」
太宰は真剣だった。
そしてその他の社員たちも、彼が云うことを十分に理解していた。
「それが判っているのにわざわざ危険な場所には連れていけない」
Aが異能に頼らずとも戦えることなど、彼が一番知っている。
だが、そうではないのだ。
彼女が傷つくのを防ぎたかったのだ。
「勝手な私の判断だが、善いかな国木田くん」
「構わん」
国木田も文句を云わなかった。
と云うよりも寧ろ、此れが正しい選択である。
.
少し時間を遡って、作戦立案前。
探偵社の入り口前、一人の少女が立っていた。
彼女は丁度、戻ってきたところだった。
『……港の、倉庫』
ボソリと呟かれた言葉。
もちろんそれに気づく者はいないし、彼女が聞いていることを知る者もいない。
さらりと長い髪がなびいた。
茶髪の少女は、何処かへ向かって、一人で歩いて行った。
.
473人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
河瀬(プロフ) - 久しぶりに心を締め付けられる作品を拝見しました…!もう涙腺崩壊です(つД`)ノありがとうございました!! (2018年12月28日 10時) (レス) id: 4d532e1b9e (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - コメ失礼します! 凄く良作で文才が素晴らしいですね…文才わけて欲しい位です(笑)感動し過ぎて涙が止まらなかったです!! 素晴らし過ぎて語彙力無くなりました… (2018年6月17日 21時) (レス) id: 1ce36ab38c (このIDを非表示/違反報告)
夢らら(プロフ) - 完結おめでとう! (2017年11月12日 13時) (レス) id: 3821086925 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした。すごくメッセージ性のあるお話で、心に残りました。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2017年11月12日 7時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - どんぐりさん» 嬉しいコメントありがとうございます!そう言って頂けると感激して泣きそうです!(笑) (2017年11月12日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月31日 0時