15:初日の朝。 ページ15
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「おっはよー」
『おはようございます』
何時もながら呑気に出社してきた太宰に国木田は冷たい視線を送る。
が、今回彼は、太宰には声をかけなかった。
「A」
『は、はい』
ずかずかと近寄ってくる国木田に、Aはひっ、と声を漏らした。
彼の威圧感は凄まじい。
「初日から遅刻とはどうなっているのだ!」
『えっ、遅刻ですか?』
Aは社内の時計を見た。
社員寮の時計とは、寸分の狂いもなかった。
『太宰さんが、出社時間はこの時間だって、』
小さくそう云えば、国木田の標的は太宰へと変わった。
どうやら彼女は騙されたらしい。
怒鳴る国木田に話を聞かない太宰。
その二人を眺めていると、Aは後ろから聞こえた声に振り返った。
「買い出し、一緒に行こう?」
『私?』
彼女に声をかけたのは、谷崎ナオミ。
谷崎潤一郎の妹で、武装探偵社の事務員だ。
ナオミはここで、Aと一番歳が近い女性である。
「Aちゃん以外ありえないわ。社長からの許可も頂きましたし!」
『でも私、物の良し悪しとか善く判らないし、』
「行きますわよ!」
ナオミは強引にAを連れて歩き出す。
Aもそれを嫌がっているようには見えなかった為、それを止める人はいなかった。
「ナオミちゃん、Aは服も何も持ってないからそれもお願ーい」
「判りましたわ!」
『わっ、ちょっとナオミちゃん、』
バタンとドアが閉まり、少し静かになった。
太宰は二人が出て行った方向を長く、眺めていた。
「ナオミちゃんの様な子がいてくれて助かったよ」
「あぁ、そうだな」
太宰の言葉に国木田も同意する。
Aには、多少なりとも強引に接してくれる人が必要だった。
彼女は何処か、太宰の様子を伺いながら行動していることがあるように見えた。
太宰もそれが判っているからこそ、そう云ったのだ。
「昨日の夜はどうだったんですか?」
「うんとねぇ、」
昨晩は、特に問題はなかったように思えた。
彼女の心は不定期に乱れる。
対処法は、これから探していくしかないだろう。
今度は、間違えないように。
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河瀬(プロフ) - 久しぶりに心を締め付けられる作品を拝見しました…!もう涙腺崩壊です(つД`)ノありがとうございました!! (2018年12月28日 10時) (レス) id: 4d532e1b9e (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - コメ失礼します! 凄く良作で文才が素晴らしいですね…文才わけて欲しい位です(笑)感動し過ぎて涙が止まらなかったです!! 素晴らし過ぎて語彙力無くなりました… (2018年6月17日 21時) (レス) id: 1ce36ab38c (このIDを非表示/違反報告)
夢らら(プロフ) - 完結おめでとう! (2017年11月12日 13時) (レス) id: 3821086925 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした。すごくメッセージ性のあるお話で、心に残りました。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2017年11月12日 7時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - どんぐりさん» 嬉しいコメントありがとうございます!そう言って頂けると感激して泣きそうです!(笑) (2017年11月12日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月31日 0時