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8:しあわせ。 ページ8

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『敦くん、一つお願いがあるんだけど』

「はい?」





急に立ち上がったAさんは、長い髪を風でなびかせながら僕を見た。





その姿がとても綺麗に見えて、生きた彼女に出会えなかったことに少しだけ寂しさを感じた。






『私がいるってこと、太宰には内緒ね』





さっき会ったときと同じように、人差し指を口に当てて云った。






「貴方はそれで、良いんですか?」

『うん。見えないものは見えないままなんだから、知らない方が良い』






本当に良いのか、とは思ったけど、本人がそう云うのだからその通りにしようと思った。





僕は彼女が此処に残っている理由を知らない。





だから、少しでも彼女の役に立てるようにしたかった。








『さてと、、行こうか、敦くん!』

「え、何処へ?」

『太宰がドラム缶にハマってる気がする』






急かすAさんの後をついて行くと、彼女の予想通り、太宰さんはドラム缶にハマっていた。





一度見たことのある光景だったけど。





蹴りでも良いから助けてあげて、と云われたから、前と同じようにドラム缶ごと倒して救出。





するとAさんは嬉しそうに太宰さんの周りを歩いた。





彼女は、太宰さんの近くにいるときが一番幸せそうに見える。






「連絡をせずとも私の危機を察知するなんて、成長したね敦くん!」

『私が気づいたんだよ』

「死にそうだったから助かったよ」






噛み合っているようにも見える会話が、ほんの少しだけ僕の心を締め付けた。





『ありがとう、敦くん』






Aさんは、笑って消えた。







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9:ごめんね。→←7:孤独の世。



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まー - 本当に感動しました。最後は涙が止まりませんでした。こんな素晴らしい作品をありがとうございます (2018年8月8日 15時) (レス) id: ab7b5460c2 (このIDを非表示/違反報告)
翠衣(プロフ) - 本当に本当に素晴らしい作品でした!完結おめでとうございます!これからも頑張って下さい! (2018年3月27日 1時) (レス) id: 4fc9219ff5 (このIDを非表示/違反報告)
ピロウ(プロフ) - 夜分にすみません、完結おめでとうございます!途中何回も何回も高評価の星を押しちゃうくらい、大好きな作品でした。最初から最後まですごく綺麗なお話で、本当に尊敬致します。これからもお身体に気をつけて、ご自分のペースで頑張ってくださいね! (2018年3月27日 0時) (レス) id: aafbc19e8e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ゆーさん» わわわ、ありがとうございます!!最近スランプであまり話が浮かばなくて、更新遅いんですけど頑張りますのでよろしくお願いします!! (2018年3月25日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
ゆー - コメント失礼します!ろろみや。さんの作品大好きです!!!!他のもみてます!!これからも更新頑張ってください! (2018年3月25日 1時) (レス) id: b0013dea70 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2018年2月17日 18時

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