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7:孤独の世。 ページ7

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「太宰さんのお知り合いってことは、マフィアだったんですか?」

『うん、そう。ところがある日、私は任務中に撃たれて死んでしまったの』

「全然笑えないんですけど、」

『そこは軽く受け流して』






初めて会ったとは思えないくらい、楽に話せた。




それは気さくなAさんの人柄にあったのかもしれない。




話していくうちに、亡くなった時からずっと太宰さんの側にいるということが判った。




でもそうなると、不思議なことが一つあった。






「太宰さんは、Aさんのことが見えてるんですか?」

『いや、太宰には見えてないよ』

「じゃあ、昨日話してたのは…?」






Aさんは、昨日?、と少し天を仰いでから思い出したように手を叩いた。





『あれは勝手に私が太宰の独り言に相槌を打ってただけ』

「聞こえてないのに?」

『だってずっと一人なんだもの、聞こえてないとしても誰かと話したくもなるよ』

「それって、」






云おうとして、止めた。




多分これは、云ってはいけないことだ。







『それって、悲しくないのかって?』






それでも彼女は気づいていたようで、それを言葉にした。




怒っているようには見えなかった。







『もちろん悲しいよ。でもね、それで良いの』






苦しんでいるようにも見えなかった。




寧ろ、受け入れているようだった。






「じゃあ、僕が話し相手になります!」






彼女は目を見開いて驚き、僕を見た。




何故かその顔が、僕には泣きそうにも見えた。






『凄く、嬉しいこと云ってくれるね』







だって、四年以上も同じ人間が近くにいるのに言葉を交わせなかったんだから。




きっと、自分だけ隔絶された世界にいるような、大きな孤独感があったんだと思う。






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8:しあわせ。→←6:十八の時。



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まー - 本当に感動しました。最後は涙が止まりませんでした。こんな素晴らしい作品をありがとうございます (2018年8月8日 15時) (レス) id: ab7b5460c2 (このIDを非表示/違反報告)
翠衣(プロフ) - 本当に本当に素晴らしい作品でした!完結おめでとうございます!これからも頑張って下さい! (2018年3月27日 1時) (レス) id: 4fc9219ff5 (このIDを非表示/違反報告)
ピロウ(プロフ) - 夜分にすみません、完結おめでとうございます!途中何回も何回も高評価の星を押しちゃうくらい、大好きな作品でした。最初から最後まですごく綺麗なお話で、本当に尊敬致します。これからもお身体に気をつけて、ご自分のペースで頑張ってくださいね! (2018年3月27日 0時) (レス) id: aafbc19e8e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ゆーさん» わわわ、ありがとうございます!!最近スランプであまり話が浮かばなくて、更新遅いんですけど頑張りますのでよろしくお願いします!! (2018年3月25日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
ゆー - コメント失礼します!ろろみや。さんの作品大好きです!!!!他のもみてます!!これからも更新頑張ってください! (2018年3月25日 1時) (レス) id: b0013dea70 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2018年2月17日 18時

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