【文スト】私は此処に。

18:過去と今。 ページ18

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君の異能は素晴らしいね、って昔誰かに云われた。





だから、そんなことないよ、って答えた。






実際、そんなことはなかった。




敵の攻撃を防ぎ、尚且つ反射させて攻撃できる。




確かに私はその異能を持っていた。




でも、当たり前のように弱点があった。




一つの方向でひとつの空間しか捻じ曲げられなかった。




二人を同時に守るなんて不可能。




結局使い勝手の悪い異能だった。




だから、私が死んだあの日、太宰は生き残った。









_______私が思い出したいのはそんなことじゃない。









私は死ぬときに云った。




《幸せを見つけるまで死んでは駄目》って。




その言葉は私にとって自己満足だった。




そして、太宰にとって呪いだった。




私は太宰に死んで欲しくない。




でも、苦しんで欲しくもない。




太宰は死を求めている。



だけども彼は死ぬことができない。




それはきっと、私のせい。




私の言葉が太宰をこの世に留め続ける。




彼をどこかで、思い留まらせる。







あの言葉を云ったことを後悔はしていない。



あれは紛れもなく私の本心で、私の願い。



それでも、あの言葉が太宰を苦しめているのも事実。









だから私は此処にいる。









私の言葉が彼にとって、少しでも呪いでなくなるように。




彼が少しでも、幸せに近づけるように。









そう、思っていた。









私の役目はもう終わり。



未練がなければこの世に居続けることは出来ない。




『本当にお別れだよ、太宰』




寂しいなんて、云わないからね。








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