7*:黒の時代。 ページ7
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「やァ、織田作」
深夜11時、酒場に現れた織田作之助に太宰は嬉しそうに言った。
織田は太宰の隣を一つ開けて座り、軽く挨拶を交わすと、間に座るAに話しかけた。
「髪、切ったのか?」
『うん、治に切ってもらった』
「私が切ったのだよ?!凄いだろう?!」
Aの髪は程よいショートヘアになっていた。
身体の痣もなくなり、顔色も良くなった。
二年前に太宰に拾われてきた時とは全く別人のようだった。
『織田作、元気?』
「あぁ、元気だ」
織田はAの頭をそっと撫でる。
すると、Aは気持ちよさそうに目を細めた。
Aは太宰以外に自ら話しかけることは絶対にない。
例外なのが、この織田なのだ。
その後、織田は太宰の仕事についての話を聞いた。
「また傷が増えたな」
「増えたねえ」
太宰の身体は常にどこかが修理中。
織田は怪我の理由を尋ねた。
おそらく酸鼻極まる殺し合いの結果なのだろう、と思っていたが帰ってくる言葉は意外と適当なものばかりだった。
「ではその右目は?」
「これはねえ」
太宰の右目は、二年前からずっとこうだった気がしなくもない。
もしかしたらもう二度と治らないくらいの怪我をしたのかもしれない。
「別に怪我をしているわけではないのさ」
「では何故?」
織田の予想は外れた。
太宰の右目は見せられた通り、無傷。
包帯など巻く必要が見当たらない。
「これは、Aとお揃いなのだよ」
「そういうことか」
Aの左目は二度と治らないであろう怪我だ。
自分も同じだ、という太宰なりの優しさなのだろう、と織田は思った。
「ではその額の包帯は?」
「『豆腐の角で頭をぶつけて死ね』という自 殺法を試した」
完全に意味のわからない話になっても織田は素直に話を聞く。
Aはそんな二人の間でただ、出されたオレンジジュースを飲んでいた。
「今度食べさせてくれ」
太宰が開発した凄まじく硬い豆腐について突っ込むこともなく本気で話している織田。
突っ込み不在の恐ろしい空間であった。
「織田作さん、今のそれ、突っ込むところですよ」
三人がこの酒場に集い、暫くしたところで四人目が到着。
彼らの同業者、坂口安吾だ。
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ろろみや。(プロフ) - エンジョイ勢さん» うわわ、本当ですね!!!ご指摘、ありがとうございます!! (2017年8月18日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
エンジョイ勢 - 夢主ちゃん、めっさ可愛いですね。訂正させて頂きたいのですが33の今までの○○なら絶対云わないの今までが今でになってますよ?更新頑張ってください! (2017年8月18日 22時) (レス) id: 670574c7a9 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ムクさんさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2017年7月3日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
ムクさん - スッゴくおもしろいです。がんばってください (2017年7月3日 0時) (レス) id: 76af138a5e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - YYYさん» 応援ありがとうございます!読んで頂けて、嬉しいです!! (2017年6月4日 22時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年6月3日 23時