34*:太宰の願い。 ページ34
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『治?』
その日、太宰とAは久しぶりに任務があった。
だが、朝から何かを考え込んでいる太宰にAはどうしたものか、と思っていた。
支度を整え、あの日に形見として受け取った織田の拳銃を腰にしまう。
そして部屋のドアに手をかけたところで、太宰はAを引き止めた。
「A、よく聞き給え」
『うん』
「ここにいても、人を救うことはできないんだ」
太宰はAに目線を合わせてそう云った。
その言葉は、彼女を少なからず驚かせた。
「だから私は、今日の任務を放棄して、マフィアを抜けるつもりだ」
『うん』
「その時、君も連れて行きたい」
それは、Aが仲間と決別しなくてはならないことを意味していた。
マフィアを抜け出せば、きっと彼らは裏切り者となり、もう二度と戻ってくることはない。
Aに優しくしてくれた人にも会えなくなるのだ。
『いいよ』
Aは、悩む様子もなく、そう云い放った。
彼女の目からは強い意志が見て取れた。
『治が、私を、正しい方に導いてくれるから』
そして、取り出した短剣で、自らの左手を刺した。
太宰はそれを黙って見ていた。
Aの左手には、発信機が埋め込まれていたのだ。
太宰が彼女を拾ってきた時に入れられたもの。
ここ一週間、太宰はこの発信機をどうするものかと考えていたのだ。
まさか、Aが自分でこうするとは思ってもいなかったのだが。
「痛いかい?」
『痛くない』
彼女は、過去の経験上、痛みに疎くなってしまっていた。
それでも傷は痛々しい。
太宰はAの左手には包帯を巻き、逆の手を繋いで部屋を出た。
長い廊下を歩いて行く二人の背中は、何故かとても清々しく見えた。
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夜に続編出します!
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ろろみや。(プロフ) - エンジョイ勢さん» うわわ、本当ですね!!!ご指摘、ありがとうございます!! (2017年8月18日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
エンジョイ勢 - 夢主ちゃん、めっさ可愛いですね。訂正させて頂きたいのですが33の今までの○○なら絶対云わないの今までが今でになってますよ?更新頑張ってください! (2017年8月18日 22時) (レス) id: 670574c7a9 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ムクさんさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2017年7月3日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
ムクさん - スッゴくおもしろいです。がんばってください (2017年7月3日 0時) (レス) id: 76af138a5e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - YYYさん» 応援ありがとうございます!読んで頂けて、嬉しいです!! (2017年6月4日 22時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年6月3日 23時