29*:大きな存在。 ページ29
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『治』
「なんだい?」
目的地に向かう途中、Aは太宰の顔を見上げ、名前を呼んだ。
太宰は不思議そうにAを見た。
『怒る、ってなに?』
「うーん、そうだねぇ、」
きっとAは、先程鷗外に言われたことが気になっていたのだろう。
彼女にとって"怒り"とは、初めての感情だったからだ。
太宰は、考えた。
"怒り"は、ありふれた感情であり、改めて説明するとなると難しいのだ。
「怒る、かぁ」
『うん?』
Aは悩む太宰を珍しそうに見ていた。
太宰はふふ、と微笑むと少しばかり嬉しそうに口を開いた。
「人の感情を言葉で表すのは難しい。だけど、さっきAが感じたものが怒りだよ」
『ん、、?』
Aはよく判らなかった。
だが太宰は、詳しく説明しようとしなかった。
「今初めて、君は沢山あるうちの一つの感情を知った」
『うん』
太宰は道を歩きながら、淡々と話していく。
「そしてこれから、もっと沢山の感情を知って、大人になっていくんだ」
『良く判らない』
「今はそれで良いのだよ」
太宰の表情は晴れやかだった。
Aが少しずつでも成長している、そのことは彼にとっての喜びであった。
『治といられることは、嬉しい』
「え?」
太宰は驚いた。
Aの口から"嬉しい"という言葉が出てくるなど、予想だにしていなかったからだ。
『この感情は、嬉しい、だって教えてもらった』
「誰にだい?」
『織田作』
あぁやっぱりか、と太宰は思った。
矢張り織田は、Aの中で大きな存在だ。
だからこそ、失ってはならない。
「織田作にもっと色んなことを教えてもらはなくてはね」
『うん』
二人は、足を早めた。
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ろろみや。(プロフ) - エンジョイ勢さん» うわわ、本当ですね!!!ご指摘、ありがとうございます!! (2017年8月18日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
エンジョイ勢 - 夢主ちゃん、めっさ可愛いですね。訂正させて頂きたいのですが33の今までの○○なら絶対云わないの今までが今でになってますよ?更新頑張ってください! (2017年8月18日 22時) (レス) id: 670574c7a9 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ムクさんさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2017年7月3日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
ムクさん - スッゴくおもしろいです。がんばってください (2017年7月3日 0時) (レス) id: 76af138a5e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - YYYさん» 応援ありがとうございます!読んで頂けて、嬉しいです!! (2017年6月4日 22時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年6月3日 23時