28*:友達だから。 ページ28
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「その許可証を手に入れる為、首領、あなたは何年も前から計略を張り巡らせてきました」
太宰は執務机の前に立って、言葉をぶつけ続けた。
Aは少し後ろから太宰の見解を聞いていた。
「ミミックの密入国を手助けしたのはポートマフィアだ。あなたは異能特務課を焦らさせ、重い腰を上げさせるために、わざと敵組織を横浜に招いたのです」
「太宰くん」
ここまできて、黙っていた鷗外が初めて言葉を遮る。
訂正するところはない、その言葉はAに大きな喪失感を与えた。
「一点だけ訊きたいことがある。それの何が悪い?」
Aは意味が判らなかった。
太宰が悪いと言っているのだ、鷗外が正しいわけがない。
Aは少し首を傾げて黙っている太宰を見た。
「私は、ただ、納得できないだけだ」
太宰は絞り出すように云った。
織田が養っていた孤児たちの隠れ家のことをミミックに密告したのは鷗外であり、織田をミミックの指揮官にぶつける為だ。
つまり子供達を殺したのは鷗外なのだ。
「私の答えは同じだよ、太宰くん。私は組織の利益のためなら、どんな事でもする。今更何を云うのだね」
Aはこの言葉を聞き終わる前に、握っていた拳銃をしまった。
ここで誰を撃っても、太宰に利益がないと思ったからだ。
「君は行ってはならないよ太宰くん」
出口に向けて歩き出した二人に鷗外が声を掛け、部下達がいっせいに銃口を向けた。
「あなたは私を撃たない」
「何故かね。君が撃たれることを望んでいるから?」
「いいえ。利益がないからです」
鷗外の制止の声に太宰は振り返り、目を細めた。
Aはそっと、太宰の手を握った。
「確かにそうだね。だが君にも、私の制止を振り切って彼の許に行く利益などないだろう?」
「確かに利益はありません。私が行く理由は一つ」
Aの手を握った太宰の手に優しく力が入る。
今までの威圧感を感じさせないくらい、それは優しかった。
「友達だからですよ。行こうか、A」
『うん』
二人は何事もない、日常の中で友人を迎えに行くように歩き出した。
部下達が、命令を求めるように鷗外を見た。
鷗外は、何も云わなかった。
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ろろみや。(プロフ) - エンジョイ勢さん» うわわ、本当ですね!!!ご指摘、ありがとうございます!! (2017年8月18日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
エンジョイ勢 - 夢主ちゃん、めっさ可愛いですね。訂正させて頂きたいのですが33の今までの○○なら絶対云わないの今までが今でになってますよ?更新頑張ってください! (2017年8月18日 22時) (レス) id: 670574c7a9 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ムクさんさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2017年7月3日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
ムクさん - スッゴくおもしろいです。がんばってください (2017年7月3日 0時) (レス) id: 76af138a5e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - YYYさん» 応援ありがとうございます!読んで頂けて、嬉しいです!! (2017年6月4日 22時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年6月3日 23時