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太宰は何も云わなかった。
確証のない、予感はあった。
だからこそ、驚かなかったわけではないが、すんなりと受け入れられたのだ。
『この世界は異能という奇跡で溢れています』
「君の世界は?」
『私の世界にはそんな特別な力はありませんよ。でも、だからこそ、この世界より頻繁に "奇跡" が起こるんだと思います』
Aは屋上からヨコハマを見る。鳥や飛行機が空を飛び、人々は自由に街を歩く、普通の風景だった。
しかし彼女にとってそれは、どうしようもなく愛おしいものだった。
『戦争の絶えない世界でした。当時起きていたのは、世界大戦』
「……君は、そこで闘っていたのだね?」
『はい。私の部隊は少し特殊でした。頭脳派の二人と肉体派の私で構成された、たった三人の少数部隊です』
Aは表情を変えることなく、続ける。
『国の戦況は思わしくありませんでしたが、私たち三人はうまくいっていたんです。
……でも突然、一人が死にました』
「戦死?」
Aは力なく首を横にふる。
戦死でないならば一体、とは思いつつも、太宰には思い当たる節があった。
『戦死ならば諦めもついたはずなんです。そういうご時世でしたから。
でも、彼は違った。
……彼は自分が死ぬことばかりを考えていました。
それをわかっていたからこそ、私は戦場で彼を失わないように戦い続けました』
太宰は、Aの手に、血が滲みそうなほどの力が入っていることに気づいた。
きっと彼女は後悔している。彼を、救えなかったことを。
太宰が強く握られた拳の上に手を置くと、Aは驚いた顔をして、少しだけ力を緩めた。
『私の努力は、ただの迷惑だったんです。だから彼は、自分で自分の人生に終止符を打った』
身に覚えのない話なのに、太宰には、この話が自分のことのように思えた。
"彼" の気持ちがわかるような気がした。
「その彼が、君の世界の私なのだね」
はい、と掠れた声を出しながら、Aは今にも泣き出しそうな顔で、笑った。
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碧 - 感動しました!完結おめでとうございます! (2018年11月18日 15時) (レス) id: 1914631717 (このIDを非表示/違反報告)
ANN(プロフ) - 感動しました。感動しました。完結おめでとうございます(*>∀<) (2018年11月18日 15時) (レス) id: 0ad3bbb3df (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - 完結おめでとうございます(^-^) (2018年11月18日 13時) (レス) id: e1d97e38a0 (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - すごい、こんなに感動したのは久しぶりです。 (2018年11月18日 13時) (レス) id: e1d97e38a0 (このIDを非表示/違反報告)
琴吹(プロフ) - 最高でした。 (2018年11月18日 12時) (レス) id: 0c8e621b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2018年11月17日 23時