【ヒロアカ】はなむけ (ページ2)

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個性が発現したのは、みんなよりも少し遅かった。
具体的には6歳の頃だっただろう。

自分以外の怪我を治すことができる母。
小さな願いを叶えることができる父。
その間に生まれた私の個性は、自分に直接的な関係のない願いを叶えられるというもの。

母の「自分以外」という欠点と、父の「願いを叶える」という部分を継いだものだった。

この世は個性によるさまざまな力で溢れている。
だから無個性だと思っていた私も、個性の発現にはこれ以上ないほどに喜んだことを覚えている。

ただ、その喜びも束の間のことだった。

私が個性を使えば、簡単に人を殺すことができてしまった。
悪用すれば、世界をも滅ぼすことができてしまった。
そんな兵器と化した私を、国が放っておくはずはなかったのだ。

政府はまず、個性を使用を禁止した。
そして口外を禁止し、私を表の面ではただの女の子とした。
そのままの小学校に通わせたのは、特別扱いすることで私が注目されることを危惧したからだろう。

どこに行くにも、監視の目があった。
多分ずっと、誰かが個性で私のことを見ていた。
私を守るため、そして私が個性を使わないようにするため。

守るべきなのは世間の人々で、私の尊厳ではなかったのだ。
それについて咎めたことはなかったけれど。

悪用すれば恐ろしいことが起こる個性。
それは、使い方によっては何人もの人を救うことができる。

具体的なことを言われたのはいつのことだっただろう。
でも今でもちゃんと、その時の気持ちだけは覚えている。

私が監視されていた理由の一つ、警護のため。
政府が私を守る理由、それは私をヒーローにするためだった。

君は多くの人を救えるよ、と大人は口を揃えて言った。
私のことなど何も知らないくせに。
私の夢は別にあったのに。

あたかもそれが花道であるかのように、私の言葉など誰も聞かず、私の将来は確定されていた。

全ての人間が、ヒーローになることを願っているわけではない。
私だってヒーローになりたかったわけではない。

それなのに、個性が発現したあの日から。
私はヒーローにならねばならなくなった。