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“見覚えのある人物のところまで”行ってドン、とその人の背中に思いきり頭をぶつけてしまった。
「っ、え……?」
「じ、淳弥く、ぅ……!」
流石にいきなり誰かがぶつかってきたら驚く。淳弥くんはマスク姿の俺を見てホッと安心してるみたいだけど、本当に申し訳ない。
「ご、ごめんなさい!」
「俺は大丈夫だけど……」
走って息が上がっている俺を見て何かあったのかと不思議そうな顔をしている。
「Aくんは大丈夫?」
泣きそう。
そして淳弥くんは少し離れたところにいる元クラスメイトたちに視線を一瞬だけ向けていた。
「……あぁ、そういうことか」
と、だけ言って。
「A、今日は俺の家で飲む約束してたんだよね。早く行こう」
「えっ」
「失礼します」
そのような約束はしていない。俺の腕を掴み、少し会釈をしてこの場から離れていく。
後ろの様子は怖くて見れなかったけど、彼らは追いかけてはこなかった。
◇
小さな公園にあるベンチで我慢していた涙をぽろぽろと流す。
「んぐっ、うぅ……」
「何かあった?」
「抱きついていいですか」
「それは後にして」
え。否定はしないんだ。
「えっと、高校の元クラスメイトと会ったんですよ。そして飲み行こうっていう話になっちゃって」
「……」
「俺って声高いじゃないですか。だからその、学生時代に馬鹿にされたこと多くて」
カタコトになりながらも短くまとめて伝えた。
隣に座っている淳弥くんの様子が気になってチラッと視線を変える。
「Aくん」
「は、はい」
緊張。
「Aくんは魅力的だよ」
「!」
「気にする必要はない」
そう言われたのは今まであったのか記憶にない。だけど、直接言われるのは初めてかもしれない。
「それに俺とか……みんながAくんの良いところをよく知っているから」
淳弥くんはぽん、といつものように俺の頭を撫でてくれた。
「ぎゅって“した“い“ですぅ……!」
「はいはい」
とりあえず嬉しくてしょうがない俺は人との距離感が近くなるのか(人のことは言えない)、いつの間にか抱きついていた。
「Aくんは俺には甘えたなの?」
「だめですか……」
「全然いいよ。頼りにされて嬉しくない人はいないからね」
「う“ぅ……淳弥くん、これからもよろしくお願いします”」
「ははっ、こちらこそ」
その後も好きだーとかなんとか言った気もするが、何かと記憶があやふやだった。
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作者名:のん | 作成日時:2023年8月4日 20時