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今の自分も昔の自分も同じ有栖川Aだけど、昔とは変わって生きているんだと感じている。
そんなこんなで数日が経った。
「ふんふふーん」
最近の俺は調子がいい。アフレコ中も監督さんや同業者の方々からたくさん褒められた。子どものときみたいにニヤニヤしちゃったけど……。
俺は現在、仕事帰りで街中を歩いている。夜だから人がたくさんで早く家に帰りたいなーと思いつつ歩くスピードを早める。
「あれ?有栖川くん?」
「!?」
しかしそのとき、聞き覚えのある俺の名前を呼ぶ声が耳に入ってきた。これまた不思議で、ざわざわとうるさい街中なのにはっきりと聞こえてくる。
「やっほーありす!」
「Aくーん!」
後ろを振り向くと、外見がガラッと変わっている高校の元クラスメイトたちが立っていた。何の集まりだ?
「ていうか、その呼び方やめろよな」
「えぇーいいだろ別にー!」
“ありす”と呼ばれる筋合いはない。
「というか何の集まり?」
「たまたまみんなと会っちゃって今から飲み行こうっていう話になってるんだ」
「へ、へぇー」
俺には関係のない話らしい。
「ということでありすくんも一緒に行こう!」
「は!?」
なんで!?そんなにみんなと親しかった記憶ないのに。
「有名人と一緒に飲めるなんてそうそうないじゃん!」
あぁ、そういうことか。目的がわかって納得した。
当時は俺の高い声をいじってきたのにな、この人たち……とこのやりとりで昔の記憶が蘇る。
___有栖川くんの声高くない?女の子みたい!
___これからはアリスちゃんって呼ぼうかな!
___有栖川くん、その高い声で女の子っぽく喋ってみて!
はぁ……と溜め息をつきたくなる。
「お、俺は遠慮するよ。みんなで楽しんで来なよ」
「え?」
あ。やばいかもしれない。“え?”の圧が怖い。
俺も行く形で肩を腕に回されたけど(距離感近いな)、つけているマスクの中で苦笑いをする。
「いいじゃん、ここで会ったのも何かの縁だしさ?」
何の縁だ。この空気、学生時代を思い出す。
「ご、ごめん。俺は本当に大丈夫だから」
と、さりげなく相手の腕を放して___“見覚えのある人物のところまで走った”。
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作者名:のん | 作成日時:2023年8月4日 20時