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＿＿高校時代も良い思い出ないんだよな。
ふとそう思った。
中学生の頃は声のせいで何かとコンプレックスを抱いて欠席することが多かったけど、高校生の頃は人間関係がとにかく嫌だった。
「放課後カラオケ行かない？」
「良いな！行こうぜ！」
「はーい！俺も行く！」
「私も！」
クラスメイト達は男女関係なく仲が良かった。だけど羨ましいとは思わなかった。場の空気を乱さないようにみんなと同じようにしなければならないという考えを持っていたからだろう。
＿＿まぁ、俺には友達と呼べる存在はいなかったからどうでもいいけど。
ただただ早く時間が過ぎてほしいと願って、教室では顔を伏せて寝たふりをするのが習慣化されていた。
……いや、最悪な思い出を蘇らせてしまった。
当時、誰かに嘘の告白をしなければならないという罰ゲームがあって、それのターゲットが俺になったんだ。
よくあるシチュエーションの、体育館裏で。
「あ、有栖川くん」
「……うん」
「好きです！付き合ってください！」
と、演技力高めな女子から告白された。もちろん嘘。
罰ゲームが流行っていることは知っていたので、照れたり顔を赤くしたりすることもなかったけど。
「罰ゲームなんでしょ？早く帰ったら？」
俺はそう言って冷たい態度をとった。
反応がつまらなかったのか、その女子生徒は舌打ちをして帰って行ったけどね。
今となっては馬鹿なことばかりをやっていたんだなとしみじみと思う。
それからなんだっけ。嫌な記憶ばかりが出てくる。
修学旅行の班決めでは俺はいつも余り物だし、面倒な掃除は任せられることも多かった。
言い返しても悪化するだけだから、言われるがままだった。
あーあ。昔の記憶なんて消えてしまえばいいのに。
◇
「……ぁ、れ？」
「A、大丈夫？」
目を開けると見覚えのある天井。俺はソファに寝ていたみたいだ。
俺の名前を呼んでくれたのは、淳弥くん。そうか、ここは淳弥くんの家だ。
全然記憶がない。
「お酒たくさん飲んで寝てたんだよ」
「……酒」
普段はお酒飲まないから、久しぶりにたくさん飲んですぐ酔ってしまったのだろう。
「いつも本当にすみません」
「魘されてたけど大丈夫？」
「……昔のことを思い出しちゃって」
俺がそう言うと、頬についている水滴を淳弥くんは黙って服の袖で拭いてくれた。
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作者名：のん
| 作成日時：2023年8月4日 20時
