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__旅館に着いてから疲れを取るために温泉に入った。旅館では入り口で少し撮ってあとはフリーだ。
現在、俺と淳弥くんは部屋にある布団の上にごろんと横になっている。いや、語弊がある。俺だけが横になっている。
「疲れたぁ……お腹いっぱい……眠い」
「お疲れ様」
大の字になって瞼がどんどん重くなる。このまま寝てしまいたいが、俺が先に寝るのは失礼だろう。
「……今ってカメラ回ってるのかな」
「回ってるよ」
「え“っ」
独り言で言ったつもりが淳弥くんの耳には入ったようで、視界に何か入ってきたかと思えば、小さなカメラ。
「こんばんはぁ」
「カメラ近い近い」
「え?もっと近づけろって?」
「ギャアアア!?」
スタッフさんに持たされた小型カメラで部屋にいる俺たちを撮ってほしいらしい。
だけど淳弥くん。めちゃくちゃカメラ近い。俺の頬をアップされても誰得なんだ。とりあえず俺は淳弥くんの浴衣姿を撮りたい。
「1日目はどうだった?」
「楽しかったです!念願の博多ラーメンを食べられたし、実は福岡タワーも気になってて行けて良かったです!」
「うんうん。俺も福岡タワーに行けて良かった」
あとは地下街にも行きたいなとか何とか雑談をする。
俺しか写っていないのが不満なので、淳弥くんの手からカメラを取る。
「淳弥くんは僕と出会えて良かったなって思ったことはありますか?」
「ガチのやつ?」
「ガチでも面白半分でも」
質問に深い意味はない。ちょっとした興味本位。
「Aくんとはもう長い付き合いだけど、色々な面で全然飽きない。仕事でもプライベートでも“あぁ、この人とずっと友達でいたい”とは思ってる」
「友達!?」
予想外の言葉が出てきた。
「友達じゃないの?」
「尊敬する先輩で……」
そうだ。俺は淳弥くんのことを先輩として___。
「じゃあこれから友達ね」
「友達、初めてできました!」
「あれ?雄馬くんは?」
「あー……親友、みたいな」
「俺より上じゃん」
どん、と軽く体当たりをされてカメラを落としそうになる。
雄馬の存在があるけど、淳弥くんは特別枠だ。
「淳弥くん重いです」
「このまま寝たい」
「僕の膝枕、寝心地悪いっすよ……」
翌日。寝起きドッキリを仕掛けた俺は完敗する。
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作者名:のん | 作成日時:2023年8月4日 20時