アリスくんは偶然だと思っている。【男主】 (ページ40)

今日:31 hit、昨日:15 hit、合計:33,386 hit

page 38 ページ40

実は“有栖川Aと旅っと！”という番組がある。これは俺とゲスト1人を迎えて東京都から出て旅をするという企画。

今回は福岡県を旅するわけだけど……。

実は既に俺たちは福岡県にいるのだ。空港の入り口前でカメラを回している。

「皆さんこんにちはー！」

「ちはー」

まだゲストは姿を見せてはいけないのに声だけ入ってしまっている。

「ちょ、まだ声出さないでくださいよ！」

「良いじゃん。これ見てる人は俺が誰かわかってるよ」

確かにこれが円盤化して発売されるときは、ゲストの詳細はもうわかっちゃうけどね。

「まあそうなんですけどね！ということでどうぞ！」

「榎木淳弥です。よろしくお願いします」

そう！実は淳弥くんと九州に来ているのだ！
テンション上げてちょっと引かれてそうだけど。

「今回はですね、淳弥くんと旅をしていこうかなと思っております！」

「みんなから“お土産待ってるよ”って言われてびっくりしたもん」

「マジっすか。じゃあ僕の分のお土産も……」

「それは無理ですね〜」

「ですよね〜」

僕の隣に来てくれた淳弥くんは楽しそうにしている。それからスタッフさんからの質問等に答えつつ、準備してある車に乗り始める。

変なことを言ってカットされないか不安だけど、僕は頑張ります！

◇

車で移動している間はカメラは回していないとのこと。ゆっくりしてて、ということなので。

「あ。可愛い」

「ん？どうしたの」

「見てください。子供が可愛い」

「本当だ。可愛い」

天神に着くまでぼーっと窓から外を見てみると、親子連れが多くて子供がはしゃぎながら歩いていた。

お父さんとお母さんと手を繋いでて、とにかく微笑ましい光景だ。

ちなみに車内では後ろの座席に淳弥くんと隣同士で座っている。

「Aくんは旅行とかするの？」

「いやぁ全くですね」

家族のこともあり、このような番組やイベント以外で東京から出ることは全然ない。つまりプライベートでは全く出ない。

「……あ、そっか」

「察してくれてありがとうございます」

淳弥くんは察してくれたみたいだ。ありがたい。

「でも、また淳弥くんと旅行してみたいです」

そう言った後にわがままを言ってしまったと後悔する。

「うん、いいよ。俺もAくんと旅行したい」

「！」

「Aくん？」

「う、ぅ……」

まだ福岡に滞在して少ししか経っていないのに、目元が熱くなってしまう。

嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。