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「今日、まだ……おれしか、いないので」
「家の鍵はどこにある？」
「バッグに…」
背中から微かに聞こえる彼の声を頼りに、肩にかけていたバッグから家の鍵らしきものを発見する。
「あ。これか」
ガチャ、と家の鍵を開けて、お邪魔しますと言ってから玄関の中に入る。玄関には花瓶や写真が置いてある。写真は彼が幼い頃の“3人”のものだ。
「おれの、へや……2かいで」
「わかった」
正面にある、2階に続く階段をゆっくりと上っていく。2階に上がると部屋が2つあり、手前の部屋にドアにAくんの名前が書かれたプレートがかけてある。
「すみま、せん」
部屋に入って彼をベッドに横にさせる。汗は少しかいていて、おでこを触るとやっぱり熱い。
薬はあるかと聞けば、薬は全然飲まないからおそらくないとのこと。
「スーパーで色々買ってくるから待ってて」
通り道にスーパーがあった。そこで飲み物や薬を購入することができれば大丈夫だ。
◇
「……あ、おかえりなさ、ぃ」
「薬飲める？」
「はぃ」
学生時代の頃と比べて体力は衰えているから、走ると息が上がって呼吸を整えるのに苦労する。
「ありがとう、ございます……」
薬を飲んだことを確認した後は、熱くなっているおでこに買ってきた冷えピタを貼った。これで少し楽になればいいけど。
「ふぅ……」
Aくんは目を閉じてすぐ眠ってしまったようだ。
俺はカーペットが敷いてあるところに腰を下ろした。このまま帰るつもりはない。心配だし、何かあったときには俺を頼ってくれればいい。
人様の部屋をジロジロと見る趣味はないが、本棚や机の上などの周囲を見回してしまう。
本棚にはたくさん漫画が並べられている。少年漫画から少女漫画まであることに驚いた。おそらく妹さんのものだろうと思うけど……あ、小説もある。タイトルだけで難しそうだなと理解できる。
机には、1枚の写真が飾られていた。幼少期のAくんと女の子の2人の写真。妹さんかな。目元が似ている気がする。
一区切りがついてから、ゆっくりと目を閉じた。
しかしそのとき、下から大きな物音が耳に入ってきた。
どんどん音が近づいて、2階に上がってきている。
「ちょっとお兄ちゃん！早く帰ってくるなら連絡くらいはして＿＿」
「……あ」
「え」
いきなり扉が開いたかと思えば、スーツ姿の女性がそこにいた。
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作者名：のん
| 作成日時：2023年8月4日 20時
