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「あら、有栖川さん。顔色が悪いような……」
「え！？そ、そうですかね？」
同業者にそう言われて心配された。
顔色が悪いという言葉を聞かれてドキッと心臓がうるさく鳴る。
今日は朝からいつもよりもダルいようなダルくないような、微妙な感じだった。だけど相手からそう言われると“そう”なのだろう。
この後は淳弥くんとラジオの収録だ。“探偵くん”が終わってから、別の作品で共演している。ふっふっふ。
淳弥くんは言わずもがな仕事がたくさんで忙しい。だからスケジュールを崩したくない。
:
:
ラジオの収録は無事終了した。
でも、いつもよりも目がよく合っていた。向かい合って座っているのだから当然なんだろうけど、普段よりもだ。
「有栖川」
「へ？」
名字で呼ばれることがほとんどだけど、今俺の名字を呼んだのは淳弥くん。現場の廊下に出てから話しかけられた。
後ろを振り向くと、いつにも増して……怒っている気がした。
「な、ななななんですか！？」
見るからに動揺を隠せていない俺。
「何か言うことは？」
「え」
「何か言うことは？」
「……」
俺、何かやらかした？
冷や汗が止まらない。これは体調のせいなのか、淳弥くんにじっと見られているせいなのかわからない。
口をぱくぱくさせて固まっていると、淳弥くんの手が俺のおでこに触れる。
「Aくん？」
「あ、はは……」
勘違い、気のせいのままでいたかったけどやっぱり駄目だった。
熱っ、と彼は小さく呟いて1回だけ溜め息をつく。
「俺たちには休め！って言うくせに自分の体調管理ができてない」
「うぅ…」
今日の俺は、所謂体調不良ってやつだ。
◇
「ごめ…なさ、ぃ」
「Aくん、ちゃんとご飯食べてる？」
「たべて、る」
俺の背中に乗っている彼は、あまりにも男性としては軽い方で心配になる。
＿＿ラジオの収録前に言おうとしていた。
だけど、頑張っている姿を見て俺が声をかけてそれを駄目にしてしまうのはどうかと思った。
しかし終わった後は限界がきたみたいで、糸がぷつんと切れたように倒れてしまった。
そして今は彼をおんぶして家に向かっている。意外と近いらしい。
「あ、そこ……です」
「わかった」
＿＿確かに、“出会った場所から少し遠い”な。
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作者名：のん
| 作成日時：2023年8月4日 20時
