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「面白かったですか?」
「うん。すごく」
2回目だったから1回目見たときよりも詳しく見ることができた……とは言えず。
個人的にものすごく楽しめた。
「Aくんの落ち着いた声、好きかも。良かったよ……って俺が偉そうに言える立場じゃないけど」
「へっ!?」
映画館を出て自然と口が動いた。
普段はこのようにハイテンション、というか元気いっぱいの印象が強いからだろうか。
「あ、ありがとう……ございます」
素直に照れている姿に目を大きく開けて驚く。
「監督さんや他の方々にも褒められました。へへっ、淳弥くんにも褒められてめちゃくちゃ嬉しいです!」
「そっか」
Aくんのこういう純粋さが良いのだろう。一緒にいて心地良い。
◇
「おいひぃ〜」
パシャッ、と写真を1枚撮る。
あるカフェの、俺の目の前に座っている成人済みの男は美味しそうにパフェを食べている。
俺と一緒に外に出かけるときは決まってAはパフェを食べる。時々俺の奢りで。
「また僕のこと撮りましたね?」
「だって美味しそうに食べるから」
そんな俺はコーヒーだけを頼んで彼を眺める。
どうしてコーヒーだけなのかと以前聞かれたが、彼の幸せそうな顔を見るだけでこっちも幸せになる。
つまり俺もお腹いっぱいということだ。
「淳弥くん、結構僕のこと撮ってますよね」
「うん」
「撮ったあとどうしてるんですか?」
「そのままだけど」
「僕にも見せてくださいよ」
「やだよ」
「“やだ”!?」
俺が知っていればいい、と言えばなんか気持ち悪い感じになってそういうことは本人には言えないけど___。
「まあいいじゃん。早くしないとアイス溶けるよ」
「わ、あっ!」
その後、アイスがトッピングされたパフェを注文したことに後悔するAであった。
「良い1日でした!」
「それは良かった」
帰り道。まだ時間があるからということでゆっくり散歩をする。
「学生時代、友達から祝われたことがなくて」
「え」
「はははっ!本当ですよ」
そういえばAくんはあまり学生時代の話をしない。関係しているのか。
「だから今こうして尊敬する先輩から祝福されるのが幸せなんです」
「……改めて、誕生日おめでとう。Aくん」
「ありがとうございます!」
その笑顔でどうかこのまま生きてほしいな。
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作者名:のん | 作成日時:2023年8月4日 20時