50：ご飯はいつでも焼くとレンチン ページ3
__ぐぅ、とどちらのお腹が鳴っただろうか。
昨日と今日で榎木さんにはお世話になりっぱなし。私はご飯作りますよとその場に立って言った。
…この人ってこんなにもわかりやすい人だったかな。私が料理をすると言ってから可愛らしい笑顔を作った___数十秒前に。
「…今までどうやって生きてきたの」
「焼く、レンチンで生きてきました」
「嘘だぁ」
「嘘じゃないです。ちゃんと生きてます」
「すげぇドヤ顔で言ってくるよこの人」
私がキッチンに立ってから。何がいけなかったのかわからない。榎木さんはストップストップ！と部屋中に響くくらいの大きな声で私を全力で止めた。
そして私の料理は2分で終わってしまった。
「そうだ。雷豆腐作るよ」
「！」
「ははっ嬉しそう」
「た、食べたかった…ので」
「はーい。じゃあ待ってて。すぐ作るから」
申し訳ない気持ちと、嬉しい気持ちが半分。
「そんなにジッと見る？」
「料理お上手な方の様子を見たいので」
「褒めても何も出てこないよ」
料理している榎木さんの姿がかっこいい、だなんて本人には絶対に言えない。
＊
食べ物がこんなにもキラキラと輝いて見えるのは気のせいだろうか。
テーブルの上に並べられたおかずと白米。早く食べたいとごくりと喉を鳴らす。
「いただきます」
「どうぞ」
「んん、美味しいです」
自然と口角が上がる。箸が進む。とにかく美味しい。
(私の料理が質素であるから)こんなにも優しいご飯は久しぶりだった。
「待って今の顔もう1度やって」
「え、無理ですよ」
「写真におさめたかった…くそぉ」
変な顔を撮ろうとするなんて酷い人だ。(実際は良い笑顔)
「こういう時くらいはその口調崩したら楽だと思うけどな」
「あぁ、癖でずっとこんな感じなんですよね」
普段と変わらない会話をしていく。だから緊張はしないんだよねと思う。
榎木さんも一緒にご飯を食べて、うまっとぼそりと言いながら口にしている。
「タメで話してみて」
「こうかな」
「おぉ」
「そんなに感動する？」
「榎本Aが俺だけに見せてくれる一面があるって良いと思うんだよな」
なぜかドヤ顔で、顎に手を当ててまるで探偵のように話す姿に一言ガツンと言おう。
「…あさみちゃんとはもうタメですけど」
「あ」
今気づいたようだ。
「そうだった俺生配信見てたんだよだからあさみちゃんがすげぇ羨ましくて嫉妬してた」
「え、えぇ…」
早口すぎて少し引いた。
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作者名：のん
| 作成日時：2023年3月11日 19時
