07 秘密 ページ7
しかしその時だった。
「何をしているの!?」
と、女性の大きな声が耳に入った。
_______聞いたことのある声だった。
「チッ。行くぞ!」
その声を聞いた途端、男らは逃げていった。
恐怖から解放されたとわかった瞬間、心臓のバクバクとした音は少しずつおさまっていった。
「大丈夫?怪我はしてない?」
「は、はい…。」
これは偶然、いや奇跡だ。
私を助けてくれた女性は_______岩茸Aちゃんだった。
榎木くんが言っていた通りだ。
Aちゃんは優しい。ものすごく。
もし、今のような状況でAちゃんの立場にいた時_______私は助けようと声をあげただろうか。
いや、怖くて逃げたかもしれない。
自分も巻き込まれてしまうと思うはず。
2人がSNS上で結婚すると公表されて、「なんであの人と?」とイライラしていた。
私だけではないはず。リアコの人も思っていたりしただろう。
「あの!」
「?」
「助けてくださり、本当にありがとうございました!」
私はペコリと頭を下げてお礼を言った。
顔を上げると、Aちゃんはニコリと笑みを浮かべてこう言った。
「困った時はお互い様だよ?気をつけてね!」
と。
この時の笑顔はとびっきりのものだった。
綺麗で、眩しくて、美しくて。
これが普段の岩茸Aちゃんだと知った。
____どうか幸せになってほしい。
一方、岩茸は______。
「すみません!」
今日はアニメ収録日であったが、あの出来事があってから遅刻してしまっていた岩茸。
「岩茸先輩、寝坊しちゃったんですか?」
「んー。」
後輩から冗談混じりでそう言われた彼女は、
「“まぁそんな感じ!”ごめんなさい、遅れちゃって。」
と誤魔化した。
岩茸はさっきの出来事を誰にも話さなかった。
そう、これは1人の女子高生との秘密である。
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作者名:のん | 作成日時:2021年8月15日 19時