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三十 ページ30

「A、屋上行こ!」









 
なんと今日、Aは俺のところには来ず帰ろうとしていた。

 
もう靴を履こうとしていた。危ない危ない。









 
俺は彼女を引き止めて、屋上まで連れて行く。









 
今気付いた。Aの目、正気がない。死んでる。彼女の目に俺の姿はない。









 
どこを見ているの?俺を見てくれない。









 










 
俺は屋上のところで彼女を座らせ、隣に座る。









 
「A、何かあった?教えて。」









 
グダグダしてても仕方ないので、直球で。









 
すると俺の言葉を聞いた途端、下唇を噛みしめた。そして、肩が震えている。


顔をしかめているので表情がわからないが、多分辛い顔だ。









 
「……あの、ね。」


「うん。」


「おと、うとが……じこに、あって…っ。」


「!」









 
精一杯振り絞った言葉。口にはしたくなかっただろう。



 
俺は彼女を腕の中に入れる。ぎゅっと抱きしめた。あぁ、震えている。









 
怖かったんだね。辛かったね。頑張ってるよ、Aは。









 
「おか、ぁさんが……なんっで…Aじゃなかっ、たんだろ…って……!」


「うん。」






 
「わたし、が……じこにっ、あえば…。」


「そんなこと。そんなことは言わないで。」


「!」









 
Aからそのような言葉を聞きたくなかった。









 
そりゃあ俺だって家族が事故に遭えば焦ってしまう。









 
だけど、彼女の親はどうかしている。


大事な家族だ。なのに、Aの方が事故に遭えばよかったって?









 
ふざけんな。そんな親、消してやりたい。Aの気持ちを知りもしないで。





 
俺の方が彼女のことを大事にしている。









 
「A、命を大切にして。まだまだ未来はあるんだから。ね?」


「…っ。」









 
未来、なんてそんなに遠くはない。すぐ来てしまう。









 
「よしよし。少しはこのままでいよっか。」


「……ありが、と。」


「どういたしまして。」









 
Aは俺の服をぎゅっと握る。力一杯。手が震えるくらいに。









 
俺はポンポンと背中まで回した手で優しく撫でた。

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設定タグ:地縛少年花子くん , 花子くん , 柚木普   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:ノン | 作成日時:2020年1月26日 18時

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