・ ページ23
・
そそくさとその場から去っていった突然態度が変わった後輩にも全く気にせずAさんは淡白に簡潔な返事をしてひらひらと手を振る。また会うかどうかは薩川のみが知る、かもしれないが。
自分で圧をかけたのに他人事のように逃げ帰る後輩ににこにこと手を振る薩川は狂犬に見えた。
「明日使うからAの家にネクタイ取りに行っていい？」
「うん。」
もう居なくなったのにまだ目の前でお熱くなっていたお二人はAさんの家に薩川が立ち寄るという形で話が纏まって帰るようだ、お二人というかお熱いのは一方的にだけれど。
そういえば薩川からのラブコールは周りがうんざりするほど聞いているけれどAさんからの返答は聞いたことがない。まあ俺達からしたらそれがあの二人の普通なのだが、それにしても100以上あげて1も返ってこないのはいくらなんでも虚しいし異常な気もする。
もしかしてAさんは薩川に丸め込まれているのではないか。Aさんは周りに興味が薄くて感情の起伏も控えめだし、申し訳ないことに薩川ならやらないと言いきれないのが怖いところだ。
なんてそんな下世話な事を考えたところで、Aさんだって無知な子供じゃないんだし流石にそれはないだろうと邪念を振り払い、そろそろ俺も帰ろうと荷物を置いている部屋に足を進める。
部屋と言ってもドアは無く、何も無い空間を荷物置き場として皆が使っているだけの場所だが、雑多に物が置かれたここではそこぐらいにしか物が置けない。足取り軽く歩を進めていたのに荷物置き場にはもう既に先客がいた。
軽い気持ちで帰る準備をしようとしていたのにこれでは帰れない。普通なら挨拶を交わすくらいで終わるかもしれないが何しろ相手はAさんと薩川だし二人は会話を交えている。
流石に俺も恋人の甘い、甘いかどうかは分からないが恋人達二人っきりの時間に割り込むような事をしないくらいの空気は読める。割り込む事も出来ず踵を返すのも足音を立てそうで出来ないという出るに出られなくなった状況でも恋人達はそんな俺なんて露知らず楽しそうに話している。
二人も帰ると言っていたしすぐ済むだろう、盗み聞きみたいになるけれど許して欲しい、と心の中で謝りながらその場に立ち止まる。
「あ、凜君、さっきのは駄目、だよ。」
「でもさぁ、あいつ絶対にAの事好きだよ。」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 162人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白昼夢(プロフ) - 嬉しすぎて混乱しているので乱文になってしまってすいません…🙇🏻♀️ 感想を送ってくださって本当にありがとうございます、とっても励みになります！これからも遅筆ながらにたくさんサさんの話を書いていくのでよろしくお願いします…！ (2023年1月4日 0時) (
レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - Twitterのフォローもありがとうございます。Twitterでもたくさんお褒めいただけて褒め殺しとはこういう事なのかと身をもって体験しました…。設定や世界観が好き、と言われたことや♡爆をされたことが初めてで嬉しさと照れが混じってくすぐったい気持ちです🫠 (2023年1月4日 0時) (レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - Cmaさん» 読んでくださって私の話を好きと言ってくださるだけでも嬉しいのに、とっても詳しく感想を送ってもらえて本当に嬉しいです…！私が自給自足の為に書いた話が自分以外のサさんに夢を見ている人に届いてこんなにも喜んでもらえたということがとてもとても嬉しいです…🥲 (2023年1月4日 0時) (レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
Cma - お気に入りマークを押した1人として読んでいましたが、最新話の文章に胸を打たれてしまい思わず感想を書きました。これからもずっと読ませていただきます。お体に気をつけて頑張ってください。応援しています。 (2023年1月3日 23時) (レス) id: c457c5465c (このIDを非表示/違反報告)
Cma - コメント失礼します。つい最近この小説を見つけstmkw3のお話にのめり込んだ者です。緻密で美しくて柔らかいとても素敵な物語をありがとうございます。少し前にstmkw3にハマった身に染み渡っております。白昼夢さんの書かれるstmkw3がとても好きです。↑ (2023年1月3日 23時) (レス) @page45 id: c457c5465c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白昼夢 | 作成日時：2022年4月20日 17時
