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誰もいない廊下で国ちゃんは私の手を弄ぶ。親指、人差し指、中指、順番に絡めてぎゅうと力を込められる。誰かに見られてしまうかもしれないと思うと少し恥ずかしい。確かめるように開いて閉じてを繰り返されるとするりと薬指を撫でられる。大切に大切にそれはもう割れ物を扱うように心底優しく。
「じゃあ、お互い頑張ろうねぇ。」
「･･･うん。」
いきなりぱっ、と手を離される。先程までの空気が嘘のように明るく振る舞う姿は素直に関心する。そういう事をすぐしてくるからずるい人だなぁと思う。暗い劇場に彼の黄色ジャージは太陽のように目立っていた。
「どうも、ありがとうございました。」
お辞儀をすると雷のような割れんばかりの拍手が降り注ぐ。舞台の上に立った私の言った事に誰かが笑う、その事に胸が満たされて私はお笑いをやめられない。
さて、いつもならここで万遍の笑みを浮かべながらうきうきで舞台からはける。けれど今日は国ちゃんが乱入する形になっている。相方ははけて私だけマイクの前に佇む。お客さんは私がマイクの前から動かないのを見てあぁ、今日も国ちゃんともするのかという顔になる。
最初は戸惑っていたお客さんも何度もこれを重ねると確かに彼はそういう事をしそうだ、と納得してしまっている。こんな意味のわからない事を出来てしまうから地下は好きだ。有象無象入り乱れた地下では光が当たらないからこそ見たことの無いような進化を遂げてしまう。
国ちゃんはジャージのチャックをカチャカチャと触りながら軽い足取りで舞台に上がってくる。
それにしても今日はいつにも増して挙動不審な気がする。いや、落ち着きが無いのはいつもの事だけど。
「ねぇ、Aちゃん。」
「どうしたんですか？」
マイクの前に立ってにこにこと両手を前でお行儀よく揃えて話しかけてくる。国ちゃんはボケる前に何故かお行儀が良くなる。
「俺ねぇ、プロポーズしようと思ってるんです！だから練習したくて！」
瞼を大袈裟にぱちぱちと瞬かせて元気良く大きな声で宣言する。
「へぇ、そうなんですか？良いですね。私でよければ付き合いますよ。」
「え！ほんとぉ！？ありがとうねぇ！」
ありがとうねぇ、なんて感謝しているくせにいざ行う時には全く敬っていないところが更に国ちゃんを変人にしていると私は思う。
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白昼夢(プロフ) - カエデさん» カエデさんお久しぶりです！私の話や言葉遣いがお好きと仰っていただけてとっても嬉しいです☺️カエデさんのリクエストに沿ったお話が書けて、カエデさんに読んでいただいて幸せになっていただけたようで私も幸せです〜🎉 (2023年4月4日 2時) (
レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - リクエストさせていただいたカエデです。引き金に指を掛けて、今 拝見させていただきました…！主さんの作るストーリーや言葉遣いがとても好きな上に自分の好きなシチュエーションでお話を見る事ができてとても幸せです。ありがとうございます！！ (2023年4月3日 3時) (レス) id: 1e00067a9a (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - 里佳子さん» コメントありがとうございます🙇♀️お褒めの言葉を頂けてとても嬉しいです、こちらこそ里佳子さんの作品を毎回楽しく読ませていただいています😌遅筆ですがこれからも頑張ります☺️ (2022年4月6日 20時) (レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
里佳子(プロフ) - はじめまして。感想が浅くて申し訳無いのですが、もうめちゃくちゃ好きなお話ばかりです…。白昼夢様の語彙力が素晴らしくて、ドキドキしつつも感動しています！これからも応援させてください😌 (2022年4月6日 5時) (レス) id: 0670838cd9 (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - のどかさん» 読んでいただけて嬉しいです！のどかさんにきゅんきゅんしていただけた小説を書けて良かったです☺️だいすきだなんてそんな、勿体無いお言葉をいただけて嬉しいです😌遅筆ですがこれからも頑張ります🙌 (2022年2月28日 21時) (レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白昼夢 | 作成日時：2022年1月16日 21時
