出会いの日 ページ4
北斗side
「あの、大丈夫ですか……？体調悪いですか？」
最初に、そう声をかけられた時、俺は反応しなかった。
できなかったわけではなくて、わざと。
俺は、声をかけてくる人なんてただの偽善者だと思ったんだ。
そして思った通り、反応しない俺を置いてどこかに行った..…はずだったのに。
「これっ……」
もう1度きこえた声に、思わず顔を上げた。
そこには息をきらした女の子が＿＿＿＿＿彼女がいた。
「コーヒー飲めますか？あ、お茶もありますよ」
北「……」
わざわざコンビニでいろいろ買ってきてくれるとは思ってなくて驚いていると、彼女はベンチに座る俺の前にしゃがみこんだ。
「手、震えてたし、寒い中ずっとここにいるみたいだったから、少しでも体温上げないとって思ったんです、けど....お世節介ですよね。
ごめんなさい」
急に謝ったかと思うと、コーヒーなどが入った袋を地面に置いた。
「ここに置いていくんで、飲んで温まって下さいね。じゃあ…」
北「っ待って、」
体が勝手に動くってこういうことか、なんてのんきに思いながら彼女の右手をつかんだ自分の左手を見た。
「あの..…？」
北「あ、いや、」
体が勝手に動いたからもちろん、何かあるわけではない。
何て言おうか考えていると、先に口を開いたのは彼女だった。
「…隣、座ってもいいですか？」
北「あ、はい」
彼女は俺の隣にそっと座ると、お茶とコーヒーを出してきた。
何も言わずにお茶を手にとると、彼女は少しうれしそうに笑った。
手に伝わる温もりから、そういえば寒かったな、なんて今さら思った。
一口飲むと、胸や目元まであたたかくなってきて、
驚く彼女の表情を見て初めて、自分が泣いていることに気づいた。
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作者名：さくら | 作成日時：2024年2月9日 17時
