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#29 ページ30

「俺な、死ぬの、そんなに怖くなかった」


ずっと自分に大した価値なんてないって思ってたし、


自分がいなくなったところで、悲しんでくれる人なんてそんなにおらんし。


「でもな?
高校入って、しげに会って、ちょっとずつ変わったんや。
この楽しい時間がずっと続けばええなぁ、なんて感覚、ずっと忘れとった。
それを思い出させてくれたんはしげやで」


あーあ。


泣くつもりなんてなかったんやけどな。


「……っ、しげに会って、生きたい、って初めて思ったんや」


ぼろぼろ溢れ出した涙。


「のんちゃん……」


いつのまにか、神ちゃんも涙ぐんでて。


そして、しげも静かに泣いてた。


「自分の体のことや。
もう長くはもたんと思う。
やから、最後のわがままやと思って聞いて?」


ほんとは『最後』なんて言葉は使いたくなかったけれど。


迫り来る現実に背を向けてもしょうがないと思った。


「死ぬまで俺のそばにおってほしいんや」


俺の言葉にしげは静かに、力強く頷いてくれた。

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作者名:シャルル | 作成日時:2019年7月14日 21時

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