卑しき狗は笑わない 肆

佰弐拾肆 体目（124体目） ページ10

「！！！ なにをしている！何処かへ去れ！」



「嫌だ」



妹に引く気はなく、ナイフを握り直しさらにSの足を赤くしていく



「真逆、君が反撃してくるとはね」


Sは少し笑いながらそのまま立っている。
表情も呼吸も安定しているのを見ると、痛みを感じていないように見えた。


「今のうちに逃げて、此処から出て準備を整えてからこいつらに復讐する。
みんなを殺したこいつらに復讐するんだ」



「私が時間を稼ぐ。お兄ちゃんはそのうちに逃げて……………」



「…………わかった」


この後、妹がこないというのも予想がついていた。だが、やつがれの心はそんな事を考えている空間はなかった。


「憎い、あの人が……Sさんが憎い」


それだけしかなかった。
共に過ごした人を殺された事への憎しみ

やつがれは嬉しかったのかもしれない。
やっと、皆が持っているような人らしい


【感情】


というものが生まれたからだ。
それからやつがれは走って、太宰さんに出会ってポートマフィアになった。
その後、ポートマフィアにSさんが所属していなかった事を知った。



(過去パート終了)




あれからSさんを許した事はない。
やつがれの感情を与えてくれた人であり、
復讐するべき相手を殺す事を望んできた。


そんな日々が続いてやっと巡り会えた。
あの時の復讐を、妹との約束を果たす時だ。



「Sさん、復讐しに来ました」


「復讐？……あぁ、あの子供達の時の」



忘れてたよ、とやつがれをわざと挑発するように言う。嫌味のように言うその口調は昔から変わっていない。



「羅生門」


羅生門はSさんの足めがけて進む。



「それほどで復讐とは、笑わせてくれるね」


「羅生門・叢！」


「せめて話くらい聞こうよ」



話しながらでもSさんはすべての攻撃を樋口を抱え回避する。


「ったく、こっちには君の大事な大事な部下が人質なんだよ？少しは気にしたら」



樋口は涙目になりながらやつがれを見ている。



「まぁいいや。ほら、来なよ」



「其方こそ少しは攻撃をしたらどうですか」



「君相手に攻撃を使うなんて動力がもったいないね」



「っ羅生門・連門顎！！」



羅生門を増やしSさんを狙う



「かかった」


Sさんが小声で言うと、樋口を離し羅生門と自分の間に押した。



「！！！」



「羅生門！」



羅生門を抑えると樋口の目の前で止まった。



「………はぁ」


Sさんは一つため息をつくと、肩を落とした。



「芥川君残念だよ」

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