卑しき狗は笑わない 肆

佰肆拾 体目（140 体目） ページ38

〜太宰視点〜






朝、起きてから急いで支度をする。





こんな忙しくて、楽しみな事は余り無い。





って、言っちゃ悪いけど。









先ずは、








ガチャ、






「言っておいた物はできてるかい？
__________梶井君」








「Zzz…………んあっ？
……………………太宰さんっっっ？！？！」





どうやら寝てたみたい。
起こしちゃったかなんて、私にはどうでもいい。いっておいたものが出来ていればそれでいい。





「出来てるかい？」






そう聞くと梶井君は近くの箱に入っている四種類に分かれている檸檬を指差した。



色も形も全て同じ、だけど
少しだけ持った時の感触が違う。
よく確かめてみないとわからないような小さな違い。



それが四種類。


「あ、一応言われた通りに作りましたが、
三つ目のやつ。こんなの一体何に使うんです……」






「…………ひみつ♪」





持っていけるのは量を考えると二つ、否、三つずつかな。






「ありがとね」




「い、いえ」






冷や汗を流している梶井君を横目に次の場所へ向かった。







ーーー
ーー
ー






「姉さん」




「来たか。用意は出来ておるぞ」







そう言って小さな筒のような物を私に投げてくる。それを片手で受け取りみると、
仕込み刀だということがわかる。




刃を見てみると薄く何かが塗ってあった。






「それも、いずれ使うじゃろ」




「流石、私の考えがもうわかってるんですね」






「当たり前じゃ。小僧の悪さなど全て頭に入っておる。
必ず、連れ戻すのじゃぞ」





「分かっていますよ、姉さん」







そう言いながらも片耳から聞こえる中也の声に耳を傾ける。
まだ、大丈夫かな。









ーーー
ーー
ー



プルルルルッ







「はい」



「全ては君にかかっている。
私も今回だけは君のことを信じなくてはならない。出来なければ、分かってるね？」





「…………分かりました。では、ご無事で」





静かに電話を切る。
盗聴器からは中也が首領に任務を依頼された声が聞こえる。





なんだ、意外にやる気じゃん。





私もできるだけ準備はした。









「必ず、取り戻してみせる」






今日は仕事もなくて、
一人で準備を整えて、隣にいてくれる人は今はいないけど、絶対取り返してみせるよ。




御伽噺の台詞みたいに少しドヤ顔で云いながら私は決戦の場所に向かった。

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