卑しき狗は笑わない 肆

佰弐拾伍 体目（125体目） ページ11

「芥川君、残念だよ」


そう呟いて銃を撃つ。
しかしそれはやつがれではない。



「カハッ………先…輩…………」



樋口だ。



「樋口…、な、んで………」






樋口は口から血を流し、銃弾が貫通した腹が赤く染まる。



「フフッwアッハハハハハハッwwwww」


Sは面白そうにケタケタ笑う


「起きろ！起きろ樋口！！！」


樋口を支えるも手は冷たくなりかけ、
グッタリと動かない。




「何を寝ている。目を覚ませ……」




もう、手遅れだと分かっていた。
けど




「っやつがれを守るのではなかったのか！！！離れないという言葉は偽りか！！！やつがれを………やつがれを、置いていくなっ！」




部下なんて替えはいくらでもいる
こいつでなくとも、いくらでも

樋口なんて弱くて、足手まといで、邪魔な……





「っ……………死ぬな、樋口……」





だのに、なぜ、やつがれは
涙をこぼす。
涙など等に枯れたはず……だのに。





「イイネイイネ、その顔。
絶望した？悲しい？苦しい？フッハハハッw」



「あ……ぁ……」



膝から崩れ落ちる。
目の前が暗いような明るいような、わからない
樋口が死んだ。
樋口がっ…………守れなかった。




「…………ぬ」



「？」



「許さぬ、お前だけは、絶対に」



許さぬ、絶対に………
たとえこの身が朽ちようと、
どれだけ壊れようと、



許さn…「芥川先輩！！！！」



背中が重くなる
暖かくなる


聞いたことのある声
この感じは……間違いない




「樋……口…………？」



「ふぅ、間に合ったみたいだね」



『彼奴はあのままでいいのか？』



振り向くと、太宰さんとA
そして樋口




「っ！！！」



「芥川先輩、私はここにいますよ」




振り向くと金髪に何時もの笑顔




「…………っ分かっている」







少し、嬉しかった
生きていて良かった、と思ったりした。




涙を無理やり止め、
前の気持ちを振り消すように首を振った。




「ほんわかしている所悪いけど、
先に……」



太宰さんの声で、先に片付けるべき相手を見る。




「話は終わった？そろそろ僕も暇になってきたから帰りたいんだけど」




自由きままに欠伸と伸びをし、Sさんは
一瞬で怪しげにニヤリと笑った。


「フフフッ」

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