卑しき狗は笑わない 参

捌拾漆 体目（87体目） ページ12

太宰と二人で、
というより太宰を半分ひきづりながら
部屋へと向かっている



『太宰、自分で歩け』



「はーい」



『起きてただろ。芥川が来た時に』




太宰は目をパチッと開くと
フフッと笑った。




「確かに起きてたよ」



『なら何故』



「芥川君が私をどう思っているかを聞きたかったのだよ。けど思ったより普通だね」



やれやれという風に手を横にし
笑う。




『そう言う太宰はどうなんだ。芥川の事をどう思っているんだ』



私は立ち止まり太宰に聞く。




「………どうだろうね」




太宰も立ち止まり、私を見ながら言う。




「気になるなら私の心をみればいい」




『心を読むのは余りしたくない』




「なんでだい？」




『人の心は黒いものだと、そうわかっているからだ』




本当はQの異能の時に聞いた言葉が本当だったらと思うと、発動できない。




「……認めているよ」



『？』



「芥川君の事だよ。
もうとっくの前に認めてる」




『認めてるのか』




「うん。けどね、
芥川君の能力は強大すぎる
いつかポートマフィアにとって欠かせない戦力となるだろう。
そんな時、能力が暴走したりしたら大変だから、私が其れを抑えるリミッターをしているんだ」




『……其れが終わったら、
芥川が一人前になったら、ちゃんと言うのか』




「どうだろうね」



スタスタと自分の部屋に帰っていく太宰。




「今日は有難う」



『私は何もしていない』



「君はそう思うかもしれないけど、
私にとってはすごく感謝すべき事だよ」



？どういう意味だ




「じゃあまた明日ね」




『あぁ』




太宰が扉を閉める。


私もそろそろ帰ろう。腹も減ったしな。

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