【HQ!!短編集】輝く石に想いを込めて。 (ページ2)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:3,415 hit

東峰旭【アメジスト】ページ2

カチ、コチ。

静かな病室に、時を刻む音が響く。

私の病気は、随分と残酷なものだった。
医者の宣告した時間に、寸分の狂いもなく殺めてしまうのだとか。

同じ病気の患者さんが居たけれど、その人も宣告された時間に亡くなってしまったから、私もそうなってしまうのだろう。

……怖いな。

ベッドの傍に座る旭は、私の話を静かに聞いてくれていた。

「…………でね、その時間、今日の12時ぴったしなんだって」

「…は」

私の言葉に唖然とした旭。
そして立て掛けられた時計に目をやる。

今は11時52分。

残り、8分。

医者によると、残り5分になると苦しくなってくるんだとか。

最善は尽くしてもらえた。
私も頑張った。

それでも、病には逆らえなかった。

だから、大切な人の前で看取られることにした。

両親も医者も病室の隅の方にいる。

「私ね、後悔は無いのか、って聞かれて、無いとは言い切れないよ。

やっぱり、
もっと学校に通いたかった。
もっと部活がしたかった。
もっと友達と話して、遊びたかった。
もっと…………

____生きて、旭と一緒に居たかったよ。」

「俺も、一緒に居たかったよ……ッ！！」

旭が大粒の涙を溢した。

カチッ

55分。

息が苦しくなってきた。

「はあっ、はぁっ……
かっ…………は、あ"ッ……！」

うまく呼吸が出来ない。
喉がヒュウ、と音を立てる。

「！？っおいA！！大丈夫か！？
しっかりしろ！！……」

音が聞こえなくなる。
皆が心配して駆け寄って来た。

皆が何か言ってる。
聞こえない。聞こえないよ。

次は目が見えなくなってきた。

ピンホールカメラみたいに、端から真っ暗になっていく。

泣かないでよ、旭。
お父さんも、お母さんも。

……旭はいつも優しくて正直者だったね。
へなちょこな所もあるけど、バレーしてる時の旭はいつも生き生きしてて、かっこよかったよ。

そんな所が、私は好きなんだよ。
向こうでも、私は旭がずっと好きだよ。

だからさ、
せめて最期くらいは。

「……わらっ、て…よ…」

最期の言葉は届いたかな。
きっと、届いたよね。

(涙で溢れた笑顔でも)

(私は絶対忘れない)

(その笑顔を最期に、私は眠れたから。)
____________________

アメジスト

2月

【誠実・心の平和】

＊ . °
正直者、という所に誠実を表しているつもりです。
旭さん難しい……。

Thanks→アリア・カルミア様