その少女、生きたがりにつき。 (ページ5)

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お金持ちの夕餉、と言ったらガチガチした冷たい夕餉という感じのイメージがあるが、東家は至って普通の夕餉だ。たぶん。前世の記憶と今世で生きてきた記憶がこんがらがってしまっている。

家族全員で食卓を囲むし、会話はするし、音楽だって聞いているから普通、なはずだ。
というか普通ってなんだっけ？私たち東家ならこれが普通だけどこの時代だったら普通じゃなかったりする？

きっと今私の顔はとんでもなく変な顔をしているのだろう。夕餉をはしたないほどに早く食べて部屋にこもったかいがあった。

｢どうしたものか…。
今のうちから仲間を作る？駆け落ち？｣

考えれば考える程、疑問がどんどん増えてくる。
仲間？駆け落ち？

仲間って何？妖怪でも相手にするの？なに、妖怪○ォッチ？駆け落ちするとしても誰とするの？水木とする？いやそれは沙代ちゃんですね。ひとりで出ていくとしても生活をするための技術なんて全くないから無駄なような気がする。

｢あー、だめ。何も考えたくない。｣

まあ、今のところは少しづつ人脈を広げていっていつか来るであろう日のために備えていこう。でも人脈とか言いつつも村の人間は信用出来ない。

考えれば考えるほど矛盾が出てきて頭がこんがらがってくる。そろそろ頭が痛くなって来そうなのでお風呂にでお入りたくなってきた。だが、東家にはお風呂は年齢順に入るという謎ルールがあるので私が入れるのはまだ先だろう。

はあ、と疲労が含まれたため息を着く。
父、母がお風呂に入るまで一体何をしようか。あいにく今はまだ昭和。スマホはおろか電話なんてまだ庶民には普及していない。黒電話の時代だ。

｢暇すぎる…。昨日までこれで我慢できてた私が信じられない。｣

一つ大きなため息を着く。
前世なら今頃バイトから帰ってきてカップラーメンでも食べている頃だろう。美味しかったなあ…
戦後直後のご時世だ。いくら金持ちの家とはいえ、ご飯は前世に比べたらあまり美味しくない。改めてカップラーメンの偉大さを感じた。

｢…あ、そうだ。外に出てみようかな｣

久しぶりにカップラーメンを食べたいと思っていたら、唐突に思いついた。いいじゃないか、夜のお散歩。釣瓶火でも探してみよう。妖怪がいることはこの世界では約束されている。探すだけ無駄では無いはずだ。

そう思った私は、こっそり屋敷を抜け出して、夜の散歩に行くことにした。