その少女、生きたがりにつき。 (ページ4)

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｢わああああッッ｣

意識が覚醒すると同時に、私は無様にも叫んでしまった。余程大きい声だったのだろう、侍女が｢お嬢様｣と呼ぶ声が聞こえる。私の部屋の襖を開けられるのは時間の問題だろう。

ぼんやりとした頭で考えるが、私にはそんなことよりももっと重要なことがあった。きっと、私にとってとても重要で、今後を左右するような問題。
私には、前世の記憶がある。あの視点の主は前世の私で、｢鬼太郎誕生ゲゲゲの謎｣という映画を見に行っていた。その時の映像だ。

｢(でもなんでこのタイミング...？)｣

そんなことを思っていた矢先に、部屋の襖がパンッという高い音とともに勢いよく開けられた。

｢ぉ、お嬢様！悲鳴が聞こえましたが、お嬢様の身になにか、？｣

襖が開けられた先に居たのは、やはり侍女だった。何度も思うが、相当でかい声だったのだろう。かなり焦っている。
それはそうだ。仕えている主人になにか起こったならたまらない。少し反省して、なるべく落ち着いた風を装ってゆったりとした口調を意識して口を開く。

｢ありがとう。虫が出ただけよ、もうどこかへ行った。｣

｢虫だったのですね！良かった…。
あ、夕餉の準備がもうすぐ整いそうなのでご準備をお願いします。｣

先程まであんなに逼迫した表情だったのにも関わらず、虫だと伝えるとパッと明るくなった。
ついでに聞こうと思っていた夕餉の時間まで言ってくれたので、ありがたい。感謝と謝罪と一言ずつ伝え、下がらせた。

ふう、と一息をつき、改めて自分のことについて考えてみる。

私は、前世は普通の女の子として生きていた。親に大学まで通わせてもらい、大学生だったはずだ。だが、ひょんなことから私が乗る自転車と車の衝突事故で死んでしまった。まあ、大学生の死因の第1位は交通事故だ。それほど珍しいことでは無い。

そして、今世。

｢鬼太郎の世界なのはいいとして、よりにもよって龍賀の分家とか…。笑えなー…｣

龍賀の分家の娘、東家のとして産まれ、生きている。
まあ今世の両親の元に産まれたのは何ら後悔はない。むしろここに産まれてよかったと思う。だが、問題はそこじゃない。未来だ。いつか私は狂骨に喰われて哭倉村と共に死ぬ。

この運命があるのが一番の問題だ。

｢どうにか解決策は無いものか…。｣

頭を捻って考えるが、何も思いつかない。取り敢えず一旦リセットして夕餉を食べようと、現代で言う食堂に移動した。