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突然だが、僕には上司がいる。
部下思いで、葡萄酒が好きで、面倒見が良い、自慢の上司がいる。
《ポートマフィア幹部・中原中也》
マフィアきっての体術使いであり、重力使い。
マフィアで体術に関しては中也さんの右に出る者はいない。
昔は元ポートマフィアで、今は武装探偵社に勤めている太宰治とペアを組み、双黒として裏社会に名を轟かせ、敵を粉砕した。
そんな上司に、僕は恋をしていた。
気づいたら好きになっていた。
元々貧民街でのたれ死んでいたはずの僕を、中也さんは異能を見込んで拾ってくれた。はじめはただ警戒していたが、身寄りもない、親にですら捨てられた僕を心配してくれて、しかも強いときた。そんな中也さんに尊敬の意を向け、それがいつしか恋情に変わっていた。
だが、中也さんは一生僕の気持ちに気づくこともないし知ることもない。
あの中也さんのことだ。俺が気持ちを伝えたところできっと変わらず接してくれる。
だが俺がそうしないのは、中也さんに無駄な迷惑をかけたくないからだ。
中也さんは幹部なので当然忙しい。徹夜で書類整理をしている日もあるそうだ。
しかも前しれっとタイプを聞いたとき、
『中也さんって好きなタイプとかありますか』
『なんだよいきなり(笑)
そうだな、元気で、素直で、つい守ってやりたくなるヤツか?』
『そ、そうなんですね...はは。』
自分⤵
元気↔軽度だがコミュ障、暗い性格
素直↔ひねくれ者
つい守ってやりたくなるやつ↔こんなヤツ守りたいはずがない
で爆死してしまった。
「もうヤダ死にたい...。」
「そりゃまた大層な願いだな。なんかあったか?」
「ち、中也さん?!お疲れさまです。」
「おう、お疲れ。で、どうしたんだ?」
「そんな大したことじゃないですよ。ご心配おかけしてすみません」
「そうか、なら良かった」と云いながらにへら、と笑う中也さん。
顔に熱が集まる感覚がする。
良くないですけど、原因は殆どあなたですからね、と心のなかで愚痴を吐きながら思う。
あー、好きだ。
時折見せるその無邪気さが入った笑顔。
ただの上級構成員の僕を心配してくれる優しさ。
だが、それと裏腹にマフィア一の体術使いという強さ。
やっぱり僕は、中也さんが好きだ。
だが中也さんは僕のことはせいぜい《いい部下》くらいにしか思っていないんだろう。俺の気持ちは届くこともないし、きっと一生片思いだ。
胸がチクチクするのを感じながら、僕は先程までやっていた書類整理に戻った。
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I am水 - こういう男主と中也さんの掛け合い大っっっ好きです…ありがとうございます… (8月11日 14時) (レス) @page7 id: f9c19b65bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かっこんとう。 | 作成日時:2023年1月15日 17時