47:盛装 ページ7
*
同窓会の会場がホテルじゃなくてよかった、と思うのは、ドレスコードを守れる自信がないから。
とはいえ、馬子にも衣装ということわざが浮かぶのは、こちらに帰ってきてから2度目だった。
『ねえ、こんな感じでいいと思う？変じゃない？』
「さっきからずっと言うとるやん、変やないて」
『本当に？大丈夫かな？』
「しつこい！どこもおかしない！信介くんが見ても可愛ええ言うてくれる！」
『ちょっと今信ちゃん関係ないでしょ！』
選んだのは、黒のVネックニットワンピース。というかそもそも、そういった場に合った服がこれくらいしか見当たらない。
少し伸びた髪をそのままにする訳にはいかず、珍しくヘアアレンジもしてみた。低いところで1本に結んだのを、後頭部の真ん中の辺りでバレッタで留める簡単なもの。
母が信ちゃんの名前を出すものだから勢いで否定したものの、実のところ、信ちゃんがどう思うか、私は少しそわそわしていた。
お祭りの時の浴衣も褒めてくれたし、もしかしたら。そう考えるだけで顔が耳の端まで熱くなるような気がした。
『し、信ちゃん』
「…………………………おん、行こか」
……と、思っていたのに、信ちゃんの冷ややかな目を見て、さっきまで熱かった私の顔も、スーッと熱が引いていくのがわかった。
いや、冷ややかと決めつけるには早いのかも。そもそも信ちゃんの考えていることは、最近分からない。口に出して言う、ということをしないからだ。
治くんや侑くんが言っていた"正論パンチ"というのもわかるけれど、それがない今、私は本人に聞くことでしか信ちゃんを知る術がなかった。
『信ちゃん、どうかしたの？』
軽トラを運転する信ちゃんの手がぴくりと反応を示す。表情は至って普段通り(私には冷たく見える)のまま、聞けば信ちゃんは口を開いた。
「……可愛ええな思てん。けど、そんな鎖骨が見えるような服やったら、他の連中に見られんのが嫌やなとも思う」
温度差で風邪をひいてしまうと思うほど、また顔が熱くなる。信ちゃんも、よく見れば耳が赤い。
可愛いとか、やきもちとか。嬉しさか何か、胸の奥がむず痒くて、『そっか』と一言返す。その後のトラックの中では沈黙が揺らめいていた。
*
更新が遅くなりました！すみません、、、！！
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：一二三 | 作成日時：2021年11月4日 8時
