【HQ】続、よもやま話【北信介】 (ページ5)

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45:千秋ページ5

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「前田さん、北さんのこと好きやと思いますよ」

「……は？」

ある日、治が突然そう言った。

お前、Aのこと好きやったよな？と訊ねると、そら好きですよ、と答えた。

「北さん、気付いてないんですか？前田さん、北さんと話したりする時の顔が全然ちゃいますよ」

悔しいなあ思てるんですよ、俺。そう言って白い歯を見せて笑う治は、どこか吹っ切れたような顔をしとった。

Aの様子が変わったことに気づかなかった訳やないけど、今まで顔を見せなかった分、いたたまれなさから来るものやと思った。

あの日、帰ろうとした俺の手を引いたAは、俺に何度も頭を下げた。俺がもうええよと伝えても、ありがとうとごめんを繰り返した。だから、そんな気持ちがまだ残っとるんやとばかり思った。

「A、ばあちゃんがこれ持ってきって」

『えっ？あ、あぁ、うん！ありがと……！』

よくよくAの顔を見れば、Aは俺と目を合わせたかと思えば、ぱっと視線を足元に移す。

目を逸らしたまま『へへ…』と笑うその顔は、まるで恥ずかしがり屋の小さな子のようで、この歳になってAの新しい顔を知った。

治の言うてる事が本当やったら、この染まった頬も、俺のせいなんやろか。

そう思うと、今すぐにでもAを抱きしめたくなって、そんな気持ちをぐっと堪えた。

焦らんでええ言うたんは俺や。

Aがどういう答えを出しても、俺はそれを打ち明けてくれるまで待ちたい。

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