33:混乱 ページ39
*
居間を出て、部屋に着く前に電話に出る。着信の画面には見知った名前が載っていて、出ようか迷った上での決断だった。
緊急の連絡だったら困るから、と言い訳を心の中で繰り返した。
『……もしもし』
〈おー、やっと出た〉
飄々とした、何度も何度も聞いた声。別れてからも度々聞いた声。
その声色から、急用ではないことがわかって、言い訳をしてまで電話に出たことを少し後悔した。
早々に電話を切ろうとすると、少し焦る声が聞こえた。
〈待て待て、ちょっと待ってお願いだから〉
『もう、まず何の用事か言ってよ』
〈あー、いや、用事ってか、声が聞きたくて〉
『声聞いたじゃん、切るよ』
〈ちょ、Aサン！？待って！言うから、用事言うから！〉
鉄朗が焦るのは珍しくて、思わず少し笑ってしまう。自室のベッドに腰掛けて、改めて用事が何なのかを問う。
鉄朗の息を飲む音が聞こえて、私も口を結ぶ。
〈会いに、行くことにした〉
『……私に？』
〈そう、お前に〉
『い、いつ？』
〈来週。有給取った〉
『どうして？』
〈会いてえ、から〉
『なに、それ。急に言われても困るよ』
淡々と会話が進むにつれて、比例するように私の混乱が大きくなる。
会いに来る？鉄朗が？会いたいからって、それだけで？
どうしてこんな短期間で、どきまぎする事が立て続けに起こるんだろう。頭の中がぐるぐるする。
他に言葉も絞り出せないまま、鉄朗は〈また近くなったら連絡する〉と言って、一方的に電話を切っていった。引き止めることも出来ず、ツー…と切電音だけが響く。
座っていた体をそのままベッドに倒して、出口の見えないトンネルを歩いているような気分に、瞼をぎゅっと閉じた。
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一二三(プロフ) - 月花さん» 切ないの、好物でして……(´∀`) コメントありがとうございます、今後ともよろしくお願いします！ (2021年10月1日 8時) (
レス) id: 828f66f0f0 (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - なんかいろいろ切ないですね……By恋愛未経験者 (2021年9月27日 6時) (レス) @page39 id: 9a5d2125ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一二三 | 作成日時：2021年7月19日 16時
