"日" レクイエム。 ページ11
私がとても大好きで大好きで仕方のなかったあの月は
死んでしまったのです。
「今日も体調は良くならないのですか?」
「に、ほんさ……。そうです、なかなか治らなくて。」
元々体の弱かったあの子……
Aはある日突然、体調を崩してしまった。
家でずっと寝たきりの状態。
原因は分からない。
本当に突然のことだった。
「Aさんの大好きな林檎、買ってきましたから、早く元気な姿を見せてくださいね。」
「日本さん、ありがとうございます。」
どれだけ辛くても口には出さなかった。
いつも笑顔で、どうして笑っていれるのだろうと疑問に思ったりもした。
「日本さんは、とても優しいですね。」
「いえ、そんな…。」
「本当にありがとうございます。」
「お礼は元気になってからにしてください。」
「はい。」
元気になるように、そう約束してその日は帰った。
数日間、仕事の関係で彼女のお見舞いに行くことができなかった。
それでも私は、彼女の元気な姿をまた見れるようにと、仕事を続けたのだ。
そして、やっと彼女に会えたのだが…。
「A…さん?」
彼女は前よりも弱ってしまっていて、体を動かすこともできなくなっていた。
寝ている彼女の隣では、彼女の両親が泣いている。
「嘘、だ………。」
Aさんと、もう話せなくなってしまうのか。
そう考えると、気が狂ってしまいそうだ。
「日本さん、娘を、娘を助けてください…。」
私の存在に気がついたご両親が、私の足にしがみつく。
できることなら助けてあげたい、彼女も、ご両親も。
だけど、だけど私には………。
「もう、無理なんです…。」
そんな技術は、私に無い。
どうすれば、どうすれば良いのか分からない。
また元気な姿を見たいのに。
情けない、無力な自分が。
彼女もご両親も助けることができない自分が憎くて。
「今日はもう帰らせていただきます。また明日…。」
最後まで言うことができずに、そそくさと家を出た。
次の日は朝早くに彼女の家に来て、どうしようかと必死に考えた。
「Aさん、必ず助けますから。」
そんな病から解放してあげたい。
「…にほ、ん……さん?」
「!!……A!!」
目を覚ましたAの手が、私の頬に触れる。
その瞬間、私の頬を涙が伝った。
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作者名:みずりんろーる | 作成日時:2017年4月11日 14時