第一話 転生 ページ1
机上に散乱したイラストを見つめると、キャラクター達も私を見返してくる。
紙には今度リリースされるアプリゲームの企画用カットが描かれており、全てキャラクターの作画を任された私のイラストだ。
昔からの夢だった仕事をすることができ、思わずたくさん描いてきたのだ。
夕日が窓から差し込む時刻、社員さんとの打ち合わせ会議を終え、そのまま皆で居酒屋へと足を運んだ。
家でも職場でもパソコンと向き合うのは何だか味気ないと思い、その日は一人で四件目まで梯子をしていたら、あっという間に終電を過ぎていた。
適当にタクシーを拾って、最寄りの駅まで送ってもらい、そこからは眠気覚ましにと歩いて帰った。
酒には強い方だったのでもとよりそこまで酔ってはいなかったのだ。
住宅街に入り、信号のない十字路に差し掛かる。
右見て、左見て、右を見て。
さあ渡ろうって真ん中まで来たときには遅かった。
止まる気のないスピードで、車が突っ込んでくる。
鈍い音が聞こえた後、私は少し吹っ飛んだ先で倒れた。
運転手は慌てて私の傍に来て周囲を確認した後、焦った様子で車に乗り込み逃げて行った。
何だ、ひき逃げかよこの屑野郎。
熱さ以外の感覚を失っても、そんなことくらいしか思いつかなかった私はやはり酔っていたのかもしれない。
誰にも看取られず、深夜三時に人通りの少ない道路で、私はゆっくりと目を閉じ微睡みに沈んでいった。
夢を掴んだとたん、手からこぼれ落ちていくような目にあった悲しみと、孤独なままのその寂しさを携えて。
真っ暗闇の中に一筋の光が見えた。
チャカポコチャカポコという音がする空間を必死に進んで見えたのは、白く霞んだ視界を覆う男女と思しき影。
「初めまして、龍之介」
そんな声が聞こえてすぐ、突然押し寄せてきた酸素が苦しくて、私は大きな産声を上げた。
私の奇怪で残酷な運命の始まりである。
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作者名:和菓子 | 作成日時:2019年9月20日 0時