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「A、あーん」


「あーん…とってもおいしいです!」


「ふふ、君はとても美味しそうに食べますね」


可愛らしいチョコレートボンボンが行儀良く並ぶボックスは、宝石箱を連想させる。


その中から一粒ずつ摘まんでは可愛い妹の口元に運び、とろけるような笑顔を浮かべる金髪の少年。


これがぼくの天職ですと言わんばかりの笑みだが、彼の本業はイタリア全土にその名を響かせるギャング、パッショーネのボスである。


「ジョジョ……差し入れは有難いですが、戻って仕事してもらえますか?」


そしてぼくは彼─ジョジョの部下なので、職務放棄には小言のひとつやふたつ言わずにはいられない。


「ぼくもたまには息抜きが必要なんです」


「そう言って15分前も遊びに来たじゃあないですか」


「気のせいですよ。ほら、まだまだありますからね」


「二箱目を出すんじゃあないッ!」


争うぼくらをよそに、Aは二箱目の包装を丁寧にほどいていく。

普段は真面目な彼女だが、どうも甘党らしい。兄のあーん攻撃も幸せそうに受け入れてしまうので、今日の授業は一向に進んでいない。


「わあ、かわいい……!」


目を輝かせるAの手にはどうやらイチゴの形を模したらしいチョコレートが。


「イチゴ……」


「ええと、Aさん?」


チョコレートを持ったまま、何故かぼくをじっと見つめるA。


「そのピアスにネクタイ……兄さん、このチョコフーゴさんにお分けしても?」


なるほど、ぼくがイチゴ好きだと思ったのか。耳元で揺れるピアスに触れる。チョコレートを見てぼくを連想したのかと思うと、少し嬉しい。


「君の為に買ってきたんだが……Aがそうしたいのなら……」


ふてくされた様子のジョジョには悪いが、せっかくの厚意に応えないと。ぼくはチョコレートのボックスに手を伸ばす。


「それじゃあお言葉に甘えて──」


「フーゴさん、お口を開けてください」


「「えっ」」


──ジョジョ、ハモらないでください。



「ほら、あーん」


Aのチョコレートを摘まんだ手が、ゆっくりとぼくの方に差し出される。鼻孔をくすぐる甘い香り。


「あ、あーん──」


おもむろに口を開く。何となく目も閉じた。心臓が高鳴るのを感じる。


「む、むぐぉ!?」


「ハハハ君は良く働いてくれますからねぼくの手で労ってやらないとさあどんどんお食べ」


割り込んで来たジョジョが口に五、六個のチョコレートを押し込む。窒息しかけた。

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あさはか金魚(プロフ) - 面白い!こんな面白い作品を作っていただきありがとうございます!! (2020年8月2日 10時) (レス) id: bae01be7f3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - tamaさん» コメントありがとうございます!最初にコメントくれた方ですよね?ずっと読んでくれていたこと、感謝します。これからも頑張ります! (2019年11月14日 0時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - お久しぶりです!31話からもうわくわくでした!頑張って! (2019年11月12日 20時) (レス) id: 85d88e1cc2 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 美琴さん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです!ハロウィン後半のテーマは『あの人達と一日限りの邂逅』です。もう11月ですがまだハロウィン回は続くので楽しんでいただけると嬉しいです! (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 幽銀さん» コメントありがとうございます!作者も読んでくださる読者の皆さんがいっぱいしゅき…… (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年9月3日 4時

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