0-1 可愛かったはずの幼馴染 ページ1
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高校1年生の春、私は生まれ育った街に帰ってきた。
元々両親が転勤族で、日本全国を回っていた所、ついに両親が海外へ行くことになった。
私はついては行かず、せっかくならとこの街に帰ってきたのだ。
今日から1人暮らし。
JKの1人暮らしが心配なのか、両親は私の引越し先の家に私も知っている人を呼んでおいたと言っていたけれど、一体誰なのだろうか。
「ここか。」
しばらく最寄駅から歩いて行けば、懐かしい景色の中に私の新居はあった。
1人暮らしにしては少し大きめの一軒家だが、時々両親も帰ってくると言っていたしちょうど良いだろう。
恐る恐る、緊張しながらドアノブへと手を伸ばす。
しかし、私の手がドアノブに触れる前に、ドアが開いた。
「あー！やっと来た！時間になっても来んかったからなんかあったんかと思ったやん！」
ドアの先にいたのは、どこか見覚えのある男の子だった。
人懐っこい笑みを浮かべて、私に話しかけているが、私の知り合いにこんなイケメンはいない。
「えっ…と、誰ですか…？」
私がそう問いかけると、目の前の彼は大きな目を更に大きく開いて、「えぇ！」と驚いている。
「俺のこと、覚えとらんの？もしかして、あの約束も忘れてもうた？」
そう言って寂しそうに目を伏せる彼。なんだか後ろに犬の耳が見えるような気がする。
しかし、こんな反応をされては、やはり申し訳ないと言う気持ちが勝つ。
私が忘れているだけで、本当は知り合いなのかもしれない。
そう思いながら、私は必死に記憶を掘り起こす。
「…あ。」
「！思い出した！？」
「もしかして、坂田…？」
私が恐る恐るそう答えれば、彼基坂田は目を輝かせて私に飛びつこうとした。
飛びつこうとしたと言うのは、私が直前で腕を伸ばして避けたから。
「すっごいカッコよくなってるから全然分かんなかったや。」
「俺はすぐにAだって分かったで！
昔よりももっともっと可愛くなっとるけど、やっぱりAは変わらんな。」
躊躇いもなく女の子に対して「可愛い」なんて言う坂田に、思わず下を向いてしまう。
目の前の彼が、あの幼馴染の坂田であると分かっていても、こんなイケメンに「可愛い」だなんて言われることはそうそうない。
きっと、今の私の耳は真っ赤になっていることだろう。
そんな私に気づいていないのか、坂田は口を開いた。
「ここで話しててもあれやし、中入ろか。他の3人も待っとるし。」
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作者名：な | 作成日時：2023年7月4日 0時
