【マギ】逢いたいが情、見たいが病。【短編集】 (ページ10)

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色の白いは七難隠する。【シャルルカン】　ページ10

彼女はとても肌の色が白い。

雪のよう、なんていう表現法はよく聞くが、まったくその通りだと思う。肩に垂れる黒髪は更に肌の色を白く見せ、それはそれは美しく見栄えが良いのだ。

触れば手が滑らかに行き来でき、しかし冷たい手の温度を感じる。

煌帝国かどこかの国で読んだ書物にも、雪のように冷たく、白い女が登場する話を思い出した。

「…東洋で読んだ本に出てくる女みてぇ」

「それはどういった書物なの？」

「んー…。『雪女』っつー題名だった気がする」

「まぁ、とても失礼ね」

言う割にそれほど気にしていないように見える。本当にそれにそっくりだ。もしかして、その昔話に出てきたのも彼女ではないかと思うほどだった。

まあそんなことあるはずもなく。

「お前の方が我儘だもんな。雪女ほどじゃねーか」

「貴方…そろそろお口の方も閉じた方が宜しいんじゃなくて？」

「ははッ、冗談だってば。んな怒んなよ」

例えどんなに我儘でも生意気でも、男は現金なもので容姿が良いとそれなりに許容範囲だ。Aの髪を優しく撫でるように触れると、彼女はゆっくり目を閉じた。いつもこれくらいだったら可愛げがあるのに。勿体ないものだ、と思いふけるように感じた。

そのうち、あの本のラストのように俺の元を去ってしまうのではないかと、可能性のある未来を考えてはかき消す。
彼女という真っ白な白紙に色彩を載せていく。いつか、自分の色に染まってくれることを望みながら。

「なぁ」

透き通るような白く細い腕を引き、軽く自分に近づけた。そして耳に囁きかけるように吐いた言葉に、彼女は薄く笑みを浮かべ、幸せそうに肩口に頭を乗せた。

「大好きだよ、A」

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色の白いは七難隠する。

(あの物語のような悲恋には決してなりたくない、と強く思ったのだ)