【マギ】逢いたいが情、見たいが病。【短編集】 (ページ8)

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悪女の深情け。【ジャーファル】ページ8

「ジャーファル様、この書類は如何なさいますか？」

貴方に近づくあの子が嫌いです。

「ねぇジャーファルさまぁ、今夜空いてます？」

貴方に媚を売るあの子も嫌いです。

「また今度、ね」

そして、そんな子達を相手にする貴方が。
この手で貶めてしまいたいほど、憎くて愛しいのです。

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自身のこの並ならぬ嫉妬深さには、毎度のことだがほとほと困っていた。

私が現在想いを寄せている政務官は、さり気なくだが女がよく寄ってくる。大体が、政務官に取り入って王に見初められようと奮闘する者ばかりだが、中にはまあ本命もいる訳で。

「恋人はお作りになられないのですか？」

その中からいても可笑しくない女の存在に胸を焦がすような思いで、お願いだからいてくれるな、と強く思いながら問いかけたのが良かったのか、恋人はまだ作る気はないとのことだった。

「私には勿体ないからね、彼女たちは」

「…そうですか」

悲しそうに笑う彼は、もう気付いてしまっているのだろうか。彼女たちが近寄ってくる理由に。

私はその一部だと思われることが嫌だったし、何より、懸命に業務に励む彼が私のことをまだ信じてくれていないのなら、本当に辛いと感じた。
眉を下げて困ったように微笑む政務官は、少しばかりやつれて見えて、より一層加護欲が駆り立てられる。

「…政務官殿も、20代ですし。あの…そろそろ、恋仲の者を見つけてはどうでしょう？」

「うーん…そうだね。でも、そんな子思い当たらないし」

「ぁッ、お、押し付けがましい申し出をしました。どうぞお気になさらず…」

また彼は泣きそうな顔をしたものだから、慌てて撤回をかけるような勢いで謝罪をした。
いいよ、と幾分か小さくなった声は驚くほどか細かった。
傷付けてしまったか、どうしよう、そんな思いでいっぱいだった私に、彼の呟きが聞こえるはずが無かった。

目を伏せたままの政務官は、さながら愛を乞う子供無邪気さ、親を求める赤子の叫びが混ざったような、複雑な声色で言葉をポツリと落とした。

「……君だったら、私を_____________」

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悪女の深情け。

(愛、熱、劣、恋が渦巻く情深さ)