【マギ】逢いたいが情、見たいが病。【短編集】 (ページ7)

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愛してその悪を知り憎みてその善を知る。【ジュダル】ページ7

愛憎の感情にかられ、何処とも知れずに散って行く。季節を過ぎた花と同じで、意味も色彩も感じられない。

「好き」

きっとゆるやかに堕ちていく。底の見えない深海に誘われ、沈んでいくように。

それでも棘のついた茎が、触らないでと醜く吐き捨てるのだろう。

理性なんか遠くに飛ばしてしまって、温かな腕の中で微睡んでいたい。俺の全部を受け入れてほしい。愛して、いつか本物を望むのだ。母の声は聞こえず、微笑の浮かぶ顔に触れることがなかった俺が。

「…信じねえよ」

好きだ愛してるの類の言葉。不確かなそれに何の価値があるのだろう。

どうせ本当は面倒な奴だと思っているに違いない。

「本当だよ」

ヘラヘラと笑う顔が、死ぬほど憎くて、死ぬほど好きだった。
こんなにも相対した感情に悩まされている俺に、こいつは気付いていないのだろう。愛しさを湛えたままの瞳を見て、無性に胸が痛んだ。

抉られるこの感覚。もういらない。こんな気持ちはもうごめんだ。やめろ、と言ってしまいたいけど、何に対して言えばいいのか分からない。俺は何を、こんなに。

「俺は、お前のことがきらいなんだろうな」

「私は好きだよ。可哀想な貴方が」

「……ころす」

「嘘つき、殺せないくせに」

不意に手が伸ばされる。払いのけることはしなかった。
頬に触れた手が驚くくらいに冷たくて、何でこんなに冷たいのだろうと思った。聞きはしないが。
それでも、そいつに触れられた箇所が熱く赤くなって、心臓がまた痛む。ずきずきする。

「まだ信じてないんだね、頑固者」

それでも良いよ。ずっとずっと待っててあげる。

ぼそりと溢された言葉がとても嬉しかった。「あっそ」と素っ気ない返事をしたが、声は震えていた。泣いていると分かってしまっただろうか。

…俺ってだせえ。

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愛してその悪を知り憎みてその善を知る。

(君の本性の善悪を見極めるなんて、そんなの不可能だ)