【マギ】逢いたいが情、見たいが病。【短編集】 (ページ3)

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合わせ物は離れ物。【練白龍】　※死ネタページ3

初めから決まっていたのだろうか。

赤で彩られていく国の中で出会って、柔い白の輝きを持った貴方と別れ行くことが。

喉の奥から漏れだす血液が、彼の着物を汚してしまっている。高い絹で作られているんだろう。勿体ない。だが、私の血で汚されているのなら、気分は悪くない。死に際に下らないことを思う自分を嘲笑した。

「は、く、りゅ」

肺が破れてしまっているからか、呼吸をするたびに酷く痛む。

朦朧とした意識と、霞がかかって愛した彼の表情さえ窺えない視界の中、ここまでしぶとく生き長らえるのは凄いでしょう、とか細い息とともに言葉を吐き出した。

「……最後まで、貴女は、変な人だ」

そうだよ、知らなかったの？そう返そうとしたけれど、溢れだしたのは言葉なんかじゃなかった。
心臓に近い場所を抉られているせいで、もう自身の鼓動の音さえも聞こえない。
手足から急速に冷えてきて、徐々に、徐々に、生命の糸を蝕まれている様な気分になった。

「なかないで」

「泣いてません」

「…ふ、」

笑う事すらできない。もう駄目なのだ。

目蓋が望まずとも降りてくる。暗いくらい闇のなか、たった一人で取り残されてしまうのだろうか。嫌だなあ。もう思考さえも紡げない。ブツブツと切れる映像みたいだ。

「Aさん」

こんな時でもさん付け。頑固なのか礼儀正しいのか。

「…俺は意地を張っていたんだ」

涙ぐむ声さえも遠くなる。何を言おうとしてるのかさえ分からない。

「愛してます」

完全に目蓋が下りた。聴覚も後を追う様に鈍くなる。早く、早く。

「今も、これからも。ずっと」

貴女が欲しがっていた言葉を、俺は言えないでいた。傷つく貴女を、俺は何度も目にしていたのに。

続けて言われたその言葉に、二つの意味で、呼吸が止まりそうだ。
私の想いに気付いてくれていた。望んでくれていた。嬉しくて、もう枯れたはずの涙が出た。

「…わたしは、しあわせものだなぁ」

でも、それは遅すぎた幸せだったのだ。

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合わせ物は離れ物。

(固い鎖で繋がり、柔い糸で解けてしまった)