【マギ】逢いたいが情、見たいが病。【短編集】 (ページ14)

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堰かれて募る恋の情。【練白雄】ページ14

「白雄皇子は、ただいま留守にしておられますよ」

３日前。

「白雄様？ああ、ご兄弟お揃いになって狩猟に勤しんでおられるようです」

５日前。

「…白雄殿は具合が悪いと、床に臥せております。今日の所はお帰り下さいませ」

これが今日。

門番が早く帰れとでも言いたげな目線を寄こす。少しばかりむっとする。

日にちの間を開けて、恋仲の彼の下に訪れていると言うのに、ここまでくれば偶然とは言い難い。私と白雄皇子との交流を絶たせようとしているのに気付かないわけがない。
ならば、と。今日も何かしらあると思い、書簡と偽った恋文を用意をしていた。運が良ければ見られることなく通してもらえるだろうが、そうそう上手く行くだろうか。

「そうしたいところなのですが…今日は書簡を”手渡す”ようにと申せ遣っております。言わずもがな他人に漏れては困る文ですので、直接お渡ししたのですが宜しいでしょうか」

「…少々お待ちを」

門番がさっと素早く動き、誰かを呼ぶ。呼ばれたのはどうやら貴族の側近のようで、私と、私の手に持っている文(ふみ)を見やると、小さく「お通ししなさい」と言った。

小娘如きに、とでも思ったのだろう。とりあえずほっと胸を撫で下ろした。暫くして部屋へと通されると、そこには病気を患っている様には見えない白雄の姿があった。案の定、嘘をつかれたのだと思った。

「久しぶりだな。最近はそちらから出向いてくれなかったおかげで、俺は一人で酷く寂しかったぞ」

「…ごめんなさい。でも、ご兄弟と遊ばれていたのだから、寂しいは嘘でしょう？」

「はは、そういうな」

白雄は、どうやら私が屋敷に赴いたことを知らされていないようだった。いつもは余計なことばかり口走るくせに、大事にな時は口を滑らせてくれないのだ。

「ねぇ白雄様、これ、読んでくださらない？そのために今日は来たのです」

「ほう、文か。俺宛とはな」

彼は数枚の紙切れを受け取り、目を通した。至って簡単な文しか書いていないのだから、時間はかからないはずだ。

「…A」

名を呼ばれ、強く抱き締められた。彼等は知らないのだ、妨害が入るほどに恋は激しく燃え上がるものだと言うことを。

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堰かれて募る恋の情。

(その程度の邪魔だけで、止められはしないというのに)