四十三枚目 ページ5
好きだと、愛していると。
言い終える前に、自分の手が透けていくのに気がついた。紅炎もそれに気づいたようで、眉間のしわを濃くし、ぎゅうっと私の手を握った。あたたかい。その温もりと、自身のふがいなさに再び目に涙を溜めた。
「…いや、どうして、今になって、」
「落ち着け、大丈夫だ。俺がいる」
混乱した。今更になって消えかかっていく身体。この世のものではないという証。存在を失われたくなくて、ただ嫌だと駄々をこねる。
やっとここまできた。突然生を散らされ、自分のことさえわからず、返り咲くようにこの世に蘇った。そのことがたまらなく不安で、不思議で、胸が裂けるような切なさと違和感をずっと感じていた。
幾重にも涙の筋が重なっていく。嗚咽が漏れる。言いたいことがたくさんあるのに、喉に引っかかって出てこない。
もう許してほしい。私はこんなに苦しいのに、神様。なぜ助けてくださらないの。
「もう嫌、紅炎さま、何で？何故私だったの。私は何なの？」
「A…、」
「私は、どうして。こんなにも、苦しまなければならないの…！！」
自己中心的なことだと、理解していた。理不尽なことなのだと。
言われた側からしてみたら、たまったものじゃないことも。それでも、私は限界だった。
切なげに呼ばれた名前に、あらゆる感情が含まれたことが分かったけれども、それだけはもうとまれなかった。
「紅炎さま…、私、貴方と離れたくない、こんなにも、こんなにも」
想っているのに。私の世界は貴方だった。
泣くしかない私を、彼は優しく優しく抱きしめた。ああ、この温もりを、後何秒、何分。感じていられるだろうか。
透けた身体は元に戻らない。私が愛していると言葉を紡げば、たちまちに跡形もなく消えるだろう。紅炎が、私の耳元で語り始めた。
「悪かった。お前を守りきることが出来なかった、俺を許してくれ」
謝罪の言葉が欲しいのではない。貴方の愛が欲しいのだ。声には出さず、静かにその声に耳を傾ける。
「今まで苦しんでいることに気づかなかった。それは、俺がお前から目を背けていたからだ」
「俺は、お前をという妻をとって後悔しているわけでも、嘆いているわけでもない。ただ…」
.
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「お前のために、たとえ世界を失うことがあっても、世界のためにお前を失いたくない」
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ゆみ - 再開されるんですね 楽しみにしています まずは受験お疲れ様でした そして御入学おめでとうございます いろいろ大変でしょうけど無理しないでゆっくりでいいので更新頑張って下さいね (2017年5月20日 11時) (携帯から) (
レス) id: a64fcc18a2 (このIDを非表示/違反報告)
(自称)一流アサヒナー(｀・ω・´)ｷﾘｯ(プロフ) - 前からずっと星屑さんの綺麗で素敵な表現や文章が好きで読ませて頂いていたので、更新再開とても嬉しいです！ これからも応援しています！ (2017年4月2日 10時) (レス) id: 29a5d6e7d9 (このIDを非表示/違反報告)
あゆむ(プロフ) - はじめまして！マギに再熱し、紅炎という需要があるのかよくわからないキャラの沼にはまってしまい、干からびそうになっていたところを助けられました…オリジナル設定も素敵ですし、文章も読みやすく楽しめます(*'ω'*)続きがあるなら私も読みたいです！ (2017年1月26日 18時) (レス) id: ca84e134e0 (このIDを非表示/違反報告)
みこと - いやー泣きました。とってもおもしろかったです！もし続きがあるならぜひ読みたいです (2016年12月10日 23時) (レス) id: fe80c87bb7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ - 完結されてないなら続きが読みたいです 楽しみにしていますので更新頑張って下さい (2016年10月11日 19時) (携帯から) (レス) id: a64fcc18a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星屑 | 作成日時：2015年12月30日 18時
