What I lost.【爆豪勝己】 (ページ16)

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「…あ、ありがとう。花、毎日取り替えてくれてたの。“爆豪くん”だったんだ。」

シオンの花は、私が小さい頃から大好きな花だ。

「別に。…あのキメぇ喋り方やめたんだな。」

「“爆豪くん”が嫌がったから。」

そう言うと、爆豪くんは急に黙り込んで辛そうな顔をした。それからしばらく喋らなくなった。

「…聞いてた？切島と私の話。」

「聞いてたに決まってんだろ。…俺の記憶、ねぇんだろ？」

「いぇす。本当、申し訳ない。」

本当に、彼に対しては申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
彼との思い出はきっと、沢山あるのだろう。それなのに私は、その記憶全てを失ってしまった。記憶の一部なんかじゃなくて、彼の存在自体をも忘れてしまった。そんな私に、彼と…爆豪くんと話す権利なんて、一緒にいる権利なんて、ある訳がないのだ。

「オイ！何泣いてんだよ！俺が泣かせたみたいになるからやめろや！！」

「…ごめんっね、私が貴方のことを忘れなければっ、貴方が辛そうな顔なんて…しなくて済んだのに。」

「…別に辛くねーわ。お前の方が辛えだろ、アホか。」

そう言って爆豪くんは私の頭をそっと撫でてくれた。懐かしい感じがしてまた泣きそうになってしまう。

私は爆豪くんに寄りかかったまま、泣き疲れて眠りについた。

・

「昔みてぇに“勝己”って呼べよ、潤…。

彼氏より他の男が大事な女なんて聞いたことねーわ。馬鹿野郎。」